プロフィール
ソフトとハードの両天秤で建物を未来へ繋ぐ
建築総合コンサルタント企業として、建物に関するさまざまな課題を解決する株式会社翔設計。建築において必要なソフト(PM、CM、不動産、税務、収益)とハード(デザイン、設備、構造、施工)の両面をつなぎ合わせ、数多くのプロジェクトを成功に導いている。特にリノベーションやリフォーム、大規模修繕においては業界をリードしており、建物のライフタイム全体に目を向けることで、そこに新たな命を吹き込み、歴史を未来へと繋いでいる。
事業と背景
ご担当
IT戦略室 室長
濱田 千歳 氏
IT戦略室 主査
森山 雄馬 氏
設計事務所から建築総合コンサルタント企業へ
当社はもともと構造系の設計事務所として始まりました。創業当初は歴史的建造物の保存・再生を主たる事業としていましたが、そこで蓄積された改修技術を活かし、官公庁やマンション管理組合向けにも積極的にサービスを提供するようになりました。社会全体における建築にまつわる課題やお客様のご要望と向き合うなかで、現在はそれらを一手に請け負える建築総合コンサルタント企業へと変革しています。
新築や改修、耐震補強など建築におけるあらゆるコンサルティングを提供していますが、長寿命化や防災力の強化にも力を入れています。これらの事業そのものがそういった性質を持っていますがSDGsへの支援も表明しており、持続可能な建物・街・社会の実現に取り組んでいます。
また、SDGsにおける「働く環境づくりと生産性向上による企業成長の実現化」への取り組みも掲げており、我々IT戦略室も積極的に貢献しています。
「働き方改革」と「ABW」
「働き方改革」という言葉が出てきた当時、『誰もが安心して働き続けられる「働きやすさ」の実現』というコンセプトに着目し、情報システムとして出来ることはないかと考える機会がありました。少し領域は逸れますが、仕事内容に合わせて働く場所を自由に選ぶ「ABW(Activity Based Working)」というフレームワークを知り、そういった環境を情報システムの側から実現することが、“誰もが安心して働き続けられる”ことに繋がるだろうと思い至りました。
ABWの実現にはレガシーなシステムやツールが障壁になりがちだと思います。多分に漏れず当社もそういった壁と向き合ってきましたが、これを突破し、アップデートし続けることがIT戦略室のミッションだと考えています。
課題と効果
メールの限界
ずいぶんと前の話になりますが、当社はもともと完全オンプレミスで社内システムを運用しており、最初に限界を感じたのがメールでした。Outlook のPSTファイルの容量制限にぶつかり、運用でカバーする(各従業員に適宜データを削除してもらう)のも負荷が高かったため、何らかの解決策を模索しました。
そこで話に上がったのが Gmail、つまり Google Workspace(当時:G Suite)です。実は Google Workspace はもともと導入されていたのですが、あまり活用されておらず、一部の従業員がメーラーとして Gmail を使っていた程度でした。
ここをしっかりとメールサーバーごと Gmail に統一することで、容量制限などの問題を解消し、モダンなメール運用に移行することができました。
本社移転のタイミング

Gmail に移行した当時、本社の入居ビル建替えによる移転を機に、サーバールームの要否に関する話が持ち上がり、それを機に本格的なABW実現に舵を取り始めました。当社はファイル/AD/アプリケーションサーバーをオンプレミスで抱えていましたが、ABWとの相性を考え、それぞれクラウド化に踏み切りました。
ファイルサーバーについては Gmail 移行の流れで Google Drive に移行しようという判断になり、Google Workspace の活用シーンがより広がりました。一般的にはアップロード・ダウンロード速度に関する懸念もあるかと思いますが、当社はUSEN ICT Solutionsさんの GATE 02 回線によって快適に利用できており、今ではCADや図面、建物の写真など、業界特有の大容量データも Google Drive で運用管理できています。なにより、社外や自宅からでも業務データにアクセス可能となり、働き方の幅が広がりました。端末認証など、ゼロトラストの考え方も同時に導入を進めており、機密性の保持と柔軟な働き方の両立を実現する大きな一歩となりました。
残ったAD/アプリケーションサーバーは、Microsoft Azure に載せ替えることでオンプレミスからの脱却を図り、サーバールームの廃止を実現するに至りました。
コロナ禍に直面
Google Drive への移行がある程度整った頃、コロナ禍に直面しました。各社が後手の対応を迫られるなか、Google Workspace の利用やABWへのシフトが進んでいた当社は、ある程度スムーズにリモートワークに移ることができました。
最初こそ Gmail・Google Drive 利活用の社内合意形成に苦労しましたが、奇しくもコロナ禍においてその利便性や重要性の理解が進んだと思っています。
一方で、この時期にアップデートした領域ももちろんあります。たとえば、デスクトップPCからノートPCへの全台置き換え、社給スマートフォンのモバイル端末としての活用推進、Wi-Fi環境の導入、固定電話からIP電話への移行、ワークフローシステムの導入、さらには Microsoft Azure から Google Cloud への移行などです。いずれも場当たり的な対応ではなく、ABWというフレームワークが指針となってくれたと思います。
ADサーバー・拠点間VPNからの脱却
Google Workspace の活用に舵を切った段階で GCPW(Google Credential Provider for Windows)によるユーザー認証を導入する構想があり、こちらも直近で無事に実装できました。ファイルサーバーを撤廃していたことで、ADサーバーの役割は Windows ログインやユーザー管理にほぼ限られていたため、「これを GCPW に寄せればADサーバーを撤廃し、環境をよりシンプル化できる」と判断したのが大きな理由です。
今では各従業員が Google アカウントでPCにログインできており、ユーザー管理の工数も大幅に軽減できています。
Gmail や Google Drive への移行と GCPW の実装は、長年思い描いていた拠点間VPNの撤廃にも寄与しました。IT戦略室内でも是非について議論がありましたが、これまでの Google Workspace を中心とした取り組みのおかげで遂に実現に至りました。
一般的な拠点間VPNはネットワークがコア拠点に依存するため、BCP的な課題があります。当社はSDGsを支援し、事業として防災力の強化にも力を入れているため、BCP対策に積極的に取り組むことは企業経営の一貫性を保つことにも繋がります。そういった意味で、今回特定のネットワークに依存せずに業務が続けられる環境をつくれたことは、非常に意義があったと考えています。

今後の期待
時代に合わせてツールの圧縮と拡張を繰り返しつつ、できるだけ環境はシンプルに。
さまざまな歴史を経て、現在は Google Workspace を主軸としたシンプルな環境に落ち着きましたが、一方で新たな課題も感じています。例えばプロジェクト管理やナレッジ共有などの整備です。これらは Google Workspace だと機能が足りていないため、別のハブとなるツールで補う必要があると考えています。
できるだけ環境はシンプルな方が良いですが、それだけに囚われず、時代に合わせてツールの圧縮と拡張を繰り返し、絶えずアップデートしていきます。
USEN ICT Solutionsさんには Google Workspace・Google Cloud の導入をはじめ、インターネット回線やネットワーク構築などさまざまな場面でご協力いただきましたが、これからも積極的な伴走をお願いしたいと思っています。
※本導入事例に記載されている内容は2025年3月現在のものです。