本資料では、「テレワークに合わせて急いでノートPCの貸与を行った」「社内ルールの見直しでPCの持ち帰りを許可した」等、テレワーク導入のための準備を突貫で実施した際に見逃しがちなリスクを洗い出し、その対策案を解説しています。
2022.04.19
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2021年7月、Microsoft社から「Windows365」が発表されました。
リリース直後から多大な注目を浴びていたWindows365ですが、数ヶ月経過した今でも何が便利なの?何がそんなにすごいの?と思っている方もいると思います。
今回はWindows365とは何か? についてトライアルを実施してみた感想も添えながら初心者にも分かりやすく解説しつつ、ユーザ目線で運用面、機能面、コスト面のメリットを検証していきたいと思います。
Cloud PCかー...とうとうこんな時代かと思ってしまいますね。
Microsoft社のサービスで「○○365」といえばOffice365だったり、Microsoft365だったり…
リブランドで名称変更なの?などと、混乱してしまいますよね。
しかし、今回のWindows365は全く新しいサービスで、Microsoft365とはサービスが異なります。
Windows365は、端的に表現すると「クラウド版Windows」、これまでデバイスに個別にインストールが必要だったOS(オペレーションシステム)がとうとうクラウド化されてしまいました。
Microsoft社はこれを「Cloud PC」と定義付けています。
Microsoft社のDaaS(仮想化デスクトップ)といえばAzure Virtual Desktop(旧WVD)がありますが、こちらはユーザ企業側に高いITリテラシーが必要でした。
Windows365は専門知識がなくても、ブラウザを立ち上げてからわずか数クリックで初期設定まで完了してしまう手軽さも魅力のひとつです。
勿論、より柔軟なカスタマイズ性や豊富なオプションを求める企業向けに Azure Virtual Desktopは残すとの事です。
Microsoft社から複数の「○○365」が出されているので、それぞれの違いについて触れようと思います。
Office365はWordやExcelなどのOfficeツールをクラウド上で利用できるサブスクリプションサービスで、2020年4月にMicrosoft365のサービスに統合されました(一部エンタープライズ向けではOffice365の名称あり)。
Microsoft365はOffice365やEnterprise Mobility+Security(デバイス管理やセキュリティサービス)が利用できるライセンスです。
このこと自体何が凄いのかというと、デバイス側の制約を受けなくなるという事です。
これにより、使用しているのデバイスのOSが、MacだろうがWindowsだろうが、もはやPCではなくiPadだろうと、Androidだろうと、高価な高スペックPCだろうと、安価な低スペックPCだろうと、インターネットに繋がれる環境さえ整っていればWindowsが利用できることになります。
OSをMicrosoft Cloudに移行しているので、データはデバイスに残さずクラウド上で保護され、使用するデバイスが複数に亘っても前回の作業からの再開が可能です。
月曜はテレワークで自宅PCからWindows365にアクセスし、火曜は出社して会社PCで作業したとしても、社員は重たいPCを持ち歩いて移動する必要がありません。
運用面だけではなくコスト面でも大きなメリットがあります。
デバイス側の制約を受けないという事は、高価な高スペックPCだろうと、安価な低スペックPCだろうと、同じようにWindowsが利用できるという事でもありますのでコスト削減に直結しますよね。
また、Windows365は月額固定料金のサブスクリプションサービスのため、企業は固定費として経費計上が可能になります。
高額なPCを購入して減価償却費として計上しなければならない…がなくなるので、管理や経理処理の負担も軽減します。
想像しうるデメリットとしては、通信環境が整っていなければ仕事に支障が出てしまうということでしょうか。
通信障害があれば何もできなくなりますし、通信速度が遅いとそのままPC上での操作も遅くなります。
快適な通信環境が必要になります。
前述しましたが、社員が会社支給のPCを持ち歩く必要がなくなります。
そのためPC持ち出しによる破損や紛失のリスク、BYOD(Bring Your Own Device)※によるセキュリティリスクから解放されるというメリットがあります。
そもそもデバイス側にはデータが残りませんので、それだけでセキュリティは向上します。
またクラウドで提供される事により、OSは自動的に最新版が保たれる状態となり、管理者を悩ませるパッチ管理からも解放されるでしょう。
脆弱性は一刻も早く対処したいセキュリティホールですので、これは情シス担当の方からするとかなりありがたいのではないでしょうか。
また、Windows365にログインさえ出来てしまえばどのデバイスからでもアクセスできるという部分を不安視する方もいるかもしれませんが、ログイン時には多要素認証が採用されており、第三者による不正ログインは簡単にできない仕組みになっています。
※BYOD(Bring Your Own Device):業務に私物のスマートフォンやノートパソコンなどのデバイスを使用すること。
企業側は私物のデバイスにまで管理の手を伸ばせないので、パッチ管理やダウンロードしたデータの管理が行き届かず、セキュリティリスクを孕む可能性があります。
メリット | デメリット |
---|---|
・デバイスのスペックを気にしなくてよい ・管理や経費処理の負担が軽減される ・セキュリティが向上する ・リモートデスクトップに比べ導入が簡易 |
・より通信回線の品質が重要になる |
時間と場所、デバイスを選ばずWindowsを利用できるため、テレワークシーンで活躍します。
データもローカル上に保存しないため、デバイス紛失時のデータ流出リスクも低減できますし、そもそもデバイスを持ち歩く必要もなくなります。
従業員の入社・退社に併せて面倒なPCのセットアップを行う必要がなくなります。
一時雇用の社員向けなど、短期利用の為に会社支給を手配しなくても適切な環境を用意する事が出来ます。
また、私物のデバイスから(セキュリティ対策を実施した上で)Windows365につないで業務を行うことも可能になるため、会社支給のPCが壊れたとしても業務を続けることが可能です。
Mac OSを普段利用している企業がWindows環境を必要になった場合もすぐに環境用意をすることもできます※。
※Boot Camp でWindows10をインストールする方法もありますが、デバイスのスペックがある程度求められるなどややハードルは高いです。
通常、新しいPCを購入した後は初期環境設定が必要になりますが、Windows 365であれば導入時の環境設定や利用してからのOSやアプリケーションソフトウェアの更新、そしてセキュリティに関してもMicrosoftの管理下にあります。そのため、導入時の手間も必要最低限に簡略化され、運用の手間が少なく、かつセキュリティ性も確保できるのがメリットと言えるでしょう。
Windows 365のユーザー数はBusinessエディションで最大300、Enterpriseエディションは無制限となっています。
Windows 365 Businessには割引き特典があり、保有しているWindows 10 Proのライセンス付きデバイスから、サブスクリプション期間内に少なくとも1回Windows 365 Businessにアクセスする事が条件となっています。
料金プランの一覧は下記を参考にしてください。(税抜表記)
CPU | メモリ | ストレージ | Business 月額費用 | Businessハイブリッド特典適用 or Enterprise 月額費用 |
1vCPU | 2GB | 64GB | ¥3,260 | ¥2,720 |
2vCPU | 4GB | 64GB | ¥4,350 | ¥3,810 |
2vCPU | 4GB | 128GB | ¥4,760 | ¥4,210 |
2vCPU | 4GB | 256GB | ¥5,980 | ¥5,440 |
2vCPU | 8GB | 128GB | ¥6,120 | ¥5,570 |
2vCPU | 8GB | 256GB | ¥7,340 | ¥6,790 |
4vCPU | 16GB | 128GB | ¥9,510 | ¥8,970 |
4vCPU | 16GB | 256GB | ¥10,740 | ¥10,190 |
4vCPU | 16GB | 512GB | ¥14,270 | ¥13,730 |
8vCPU | 32GB | 128GB | ¥17,260 | ¥16,710 |
8vCPU | 32GB | 256GB | ¥18,480 | ¥17,940 |
8vCPU | 32GB | 512GB | ¥22,010 | ¥21,470 |
Windows365には以下2つのプランが用意されており、Businessは簡単にcloudPCを使い始めることが可能ですが、ユーザーが300名以上である場合や、オンプレミスとの通信が必要な場合、マスターイメージを使いたい場合にはEnterpriseを選択する必要があります。
上記で特に注意したい点としては、オンプレミスとの通信が不可である事。社内にファイルサーバや基幹システムあって、Windows365からアクセスさせたいという場合、Businessエディションでは対応出来ません。またマスターイメージを使いたい(マスターとなる仮想デスクトップイメージを予め設定しておきたい)場合はEnterpriseエディションを選択する必要があります。
普段お使いのPCですとWindowsを立ち上げた際、一緒に色んなアプリケーションも使用可能になりますよね。ウィルスソフトは〇〇が入っていて、試算管理は〇〇が入っていて...といった感じです。これが複製できないとなると、1台ずつソフトをインストールしないといけなくなります。これは情シス泣かせな注意点ですね。
一般企業の多くがEnterpriseエディションに流れざるを得なくなりそうですね...。そして、両エディションいずれもWindows10のマルチセッションは使えません。ユーザ数が多い場合は、マルチセッションが使えるAVD(Azure Virtual Desktop)で構築した方がコストメリットが出てくるでしょう。
Microsoft的DaaSはこれだ!!Windows Virtual Desktop(WVD)って何?についてはこちら
Azure Virtual Desktop(AVD)とは、Windows10および11のデスクトップ仮想化(VDI)で、デスクトップ環境をクラウドで利用できます。
Microsoft TeamsやOfficeのシームレスな利用が可能であり、Windowsを利用しているユーザが選択するVDIとしては一番最初の候補になるのではないでしょうか。
仮想マシンの他にも必要な管理コンポーネント(ゲートウェイ、ブローカーなど)がMicrosoft Azureで提供されるため、管理コンポーネントのメンテナンスをユーザで行う必要がないのがメリットです。
AVDについて詳しく解説した記事はこちら
クラウド上のWindowsを利用できるという点では似ているサービスではあるものの、以下の3点でそれぞれの違いがあります。
Windows365 | AVD | |
---|---|---|
セッション方式 |
シングルセッション |
マルチセッション |
課金方式 |
月額固定 |
従量課金制 |
導入のしやすさ |
導入しやすい・運用の簡易 |
一定のITスキルが必要 |
カスタマイズ性 |
不向き |
カスタマイズ性ややあり |
コストの観点からすると、月額固定であるWindows365の方が費用の予測が立てやすいメリットがありますが、ユーザ数が多くなる場合や利用する時間によっては、マルチセッションであるAVDの方が安価になるケースもあります。
利用状況を事前にある程度想定してどちらの方がメリットあるかは検討する必要があります。
提供する環境(スペックなど)を柔軟にカスタマイズする必要がある企業などでは、AVDの方がメリットを感じるケースもあるでしょう。
Windows 365は2021年8月2日に正式にリリースされました。
現在、OSはWindows 10と11を選択できます。
PCを立ち上げWindows356のWebサイト(https://windows365.microsoft.com/)にアクセス、ログインすると、Windowsで使っているアプリやコンテンツ、設定をMicrosoftのクラウドからログインしたデバイスにストリーミングされ利用できるようになります。
実際にトライアル用アカウントでログインをしてみました。
ログイン後は「次へ」を押すだけで進めます。
3分でセットアップ完了。
「お客様のクラウドPC」の中に事前に選択したスペックのPCが出来上がりました。
その後の起動もスムーズで、ブラウザ内のPCデスクトップ→Edge→Gmailと進んでみましたが、
最初はマウスやタイピングに対する反応の遅さを感じましたが、時間が経つにつれてレスポンスは良くなっていきました。何より簡単!
スピードテストサイトで速度判定もしてみました。WindowsPC上で、Windows365を
利用する場合、少しのタイムラグがあるものの通常利用に充分耐えうるサービスだと判断出来ます。
またAndoroidスマホからもアクセスしてみたところ、ブラウジングにおける速度やOfficeツールの
編集は十分可能ではあるものの、従来のリモートデスクトップと同じく、タッチ操作でカーソルを
合わせてクリックするという動作には若干手こずりました…。
タブレットやスマートフォンでWindows365を利用する場合には、キーボード&マウスは必須ですね。
10年程前までは、新しくPCを購入する際、Windows OSとOfficeライセンスが最初からインクルードされた状態で購入出来ました。
Microsoft社がPCメーカーにセット販売させていたんですね。
その後、サブスクリプションの時代の波に乗りOfficeライセンスはMicrosoft Online Servicesに姿を変え、エンドユーザと直接契約、またはクラウドサービスを提供するCSP(Cloud Service Provider)経由での契約が主流となりました。
この時点でPCメーカーとMicrosoft社との最強タッグはOSでのみ繋がる形となってしまいました。
それが今回、Microsoft社はPCメーカーからOSまで取り上げ、更には高性能PCはもう不要だと太鼓判を捺すにまで至りました。
一蓮托生だったPCメーカーとMicrosoft社が袖を分かつ瞬間を見ることになるとは…。
兎にも角にも、Windows365でOSがクラウド化されることで、企業はデバイスや環境を選ばず、セキュリティを担保しながら働くことが可能になります。
働き方が多様になる現代において、特にテレワークを推進している企業にとっては注目しておきたいサービスではないでしょうか。
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