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クラウド

概要

クラウド(Cloud)は、IT/ネットワーク用語として広く使われる概念で、インターネット上に存在するリモートのサーバーとネットワークインフラを利用して、データやアプリケーションを保存、処理、配信することを指します。クラウドは、従来のオンプレミスのインフラストラクチャやローカルのサーバーに代わる柔軟性と拡張性を提供し、リソースの効率的な利用、スケーラビリティ、コスト削減などの利点をもたらします。

クラウドコンピューティング(Cloud Computing)

クラウドコンピューティングは、インターネットを通じてリソースやサービスにアクセスするためのモデルです。これにより、サーバー、ストレージ、データベース、ネットワーキング、ソフトウェアなどのリソースが、オンデマンドで提供され、必要に応じて拡張や縮小が可能になります。

スケーラビリティ

クラウド環境では、需要に応じてリソースの拡張や縮小が容易に行えます。これにより、トラフィックの増加やビジネスの成長に柔軟に対応できます。

リソース共有

クラウドでは、複数のユーザーが同じインフラストラクチャやリソースを共有します。これにより、リソースの効率的な利用が可能となり、コスト削減が実現されます。

リソースの柔軟な配置

クラウドでは、データやアプリケーションを複数のサーバーに分散配置することができます。これにより、冗長性や可用性の向上、障害時の自動復旧が実現されます。

サービスモデルの多様性

クラウドには、Infrastructure as a Service (IaaS)、Platform as a Service (PaaS)、Software as a Service (SaaS) など、さまざまなサービスモデルが存在します。これにより、ユーザーは必要なレベルの管理とコントロールを選択することができます。

セキュリティとバックアップ

クラウドプロバイダーは、データのセキュリティやバックアップを管理します。データの暗号化、アクセス制御、定期的なバックアップなどのセキュリティ対策が実施され、データの保護が行われます。

歴史

クラウド(Cloud)の歴史は、1960年代から始まります。当時、複数のユーザーが共有するメインフレームコンピュータが登場し、リモートアクセスを通じてデータや処理能力を共有するモデルが形成されました。この時代には、リモートコンピューティングやタイムシェアリングシステムが利用されていました。

1990年代には、インターネットの普及と技術の進化により、クラウドの基盤が整備されました。1999年にはSalesforce.comがクラウドベースのビジネスアプリケーションを提供し、これをきっかけにSaaS(Software as a Service)の概念が広まりました。

2000年代初頭には、Amazonが自社のインフラストラクチャを外部に提供するAWS(Amazon Web Services)を開始しました。これはIaaS(Infrastructure as a Service)と呼ばれる形態であり、仮想マシンやストレージなどのインフラリソースをクラウド上で提供するものでした。このサービスは企業が必要なリソースを柔軟に利用できるという利点を持ち、クラウドコンピューティングの普及を促しました。

その後、GoogleやMicrosoftなどの大手IT企業もクラウドサービスを提供し始め、クラウドの普及が進みました。PaaS(Platform as a Service)やSaaSのサービスも登場し、開発やアプリケーションの展開が容易になりました。

現在では、さまざまな業界や企業でクラウドが活用されており、オンデマンドなリソースの利用、スケーラビリティ、コスト削減などのメリットが広く認識されています。また、クラウドの技術とサービスは進化を続けており、AI(人工知能)やビッグデータ処理などの分野でも活用されています。

類義語・類似サービス

プライベートクラウド(Private Cloud)

プライベートクラウドは、特定の組織や企業内部で構築されたクラウド環境です。一般に、プライベートクラウドは組織の要件やセキュリティポリシーに合わせてカスタマイズされ、内部のインフラストラクチャやリソースを利用します。プライベートクラウドは組織が直接管理し、セキュリティやコンプライアンスの要件を満たすために選択されることがあります。

パブリッククラウド(Public Cloud)

パブリッククラウドは、一般的にインターネットを通じてアクセス可能なクラウドサービスです。パブリッククラウドは複数のユーザーがリソースを共有し、サービスプロバイダーによって管理されます。一般的なパブリッククラウドプロバイダーには、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudなどがあります。

ハイブリッドクラウド(Hybrid Cloud)

ハイブリッドクラウドは、オンプレミスのプライベートクラウドとパブリッククラウドの組み合わせです。組織は自社のデータセンターやプライベートクラウドでセンシティブなデータやアプリケーションを管理し、一方でパブリッククラウドを利用してスケーラブルなリソースやサービスを取得します。ハイブリッドクラウドは、セキュリティと柔軟性の要件を満たすために採用されることがあります。

SaaS(Software as a Service)

SaaSは、クラウドベースのソフトウェアサービスの提供モデルです。ユーザーはインターネット経由でアプリケーションにアクセスし、ソフトウェアを利用することができます。SaaSでは、ソフトウェアのインストールやメンテナンスはユーザーに任され、サービスプロバイダーがインフラストラクチャとアプリケーションの管理を担当します。

IaaS(Infrastructure as a Service)

IaaSは、クラウド上でインフラストラクチャ(サーバー、ストレージ、ネットワークなど)を提供するモデルです。ユーザーは必要なリソースを自由にスケーリングし、仮想マシンやストレージを利用することができます。IaaSでは、ユーザーはオペレーティングシステムやアプリケーションの管理に責任を持ちますが、インフラストラクチャの管理はサービスプロバイダーが行います。

PaaS(Platform as a Service)

PaaSは、開発者がアプリケーションを構築、テスト、展開するためのプラットフォームを提供するモデルです。PaaSでは、開発者はアプリケーションのコードとビジネスロジックに集中し、インフラストラクチャの管理やプラットフォームの設定についてはサービスプロバイダーが担当します。

オンプレミス(On-Premises)

オンプレミスは、組織が自社内でハードウェアやソフトウェアを所有し、データセンターを構築してシステムを運用することを指します。オンプレミスのアプローチでは、組織はすべてのインフラストラクチャとアプリケーションを自社で管理し、セキュリティとコントロールを強化することができます。

グローバルIPアドレス

概要

グローバルIPアドレス(Global IP Address)は、インターネット上で一意の識別子として使用されるIPアドレスのうち、インターネット全体でグローバルに一意であるものを指します。IPアドレスはネットワーク上のデバイス(コンピューター、サーバー、ルーターなど)に割り当てられた番号であり、データパケットの送受信やネットワーク上の通信を可能にします。

グローバルIPアドレスは、インターネット上の各デバイスを一意に特定するために使用されます。これにより、デバイスがインターネット上で正確に識別され、データの送信元および送信先の情報が確立されます。グローバルIPアドレスは、IPv4およびIPv6の2つのバージョンで使用されます。

IPv4では、グローバルIPアドレスは32ビットの長さを持ち、通常はドットで区切られた10進数の形式(例: 192.0.2.1)で表されます。しかし、IPv4アドレスの数は限られており、インターネットの成長に伴い枯渇が進んでいます。これに対して、IPv6では128ビットの長さを持ち、通常はコロンで区切られた16進数の形式(例: 2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334)で表されます。IPv6は大量のアドレススペースを提供するため、アドレス枯渇の問題を解決する役割を果たしています。

グローバルIPアドレスは、インターネット上での通信において重要な役割を果たしますが、一方でセキュリティ上の懸念も存在します。グローバルIPアドレスが公開されると、悪意のある攻撃者がデバイスにアクセスし、攻撃を行う可能性があります。そのため、適切なネットワークセキュリティ対策やファイアウォールの設定などが重要です。

なお、グローバルIPアドレスに対して、ネットワーク内部で使用されるプライベートIPアドレスも存在します。プライベートIPアドレスは、特定のネットワーク内でのみ一意であるため、インターネット上で直接アクセスすることはできません。ネットワーク内部のデバイスは、プライベートIPアドレスを使用して相互に通信し、ルーターやネットワークアドレス変換(NAT)を介してグローバルIPアドレスとの通信を行います。

歴史

IPv4の普及とアドレス枯渇の問題

1980年代にIPv4(Internet Protocol version 4)が普及し、32ビットのIPアドレスが広く使用されるようになりました。

しかし、インターネットの急速な成長により、IPv4アドレスの数が枯渇する問題が浮上しました。アドレス空間の限界により、新たなデバイスやネットワークの接続が制限される可能性が生じました。

IPv6の開発と導入

IPv4のアドレス枯渇を解決するため、IPv6(Internet Protocol version 6)が開発されました。IPv6は128ビットのアドレス空間を提供し、IPv4の枯渇問題を解決するために広く採用されています。IPv6では、アドレス表記がIPv4とは異なり、16進数とコロンで区切られた形式を採用しています。

IPv4とIPv6の共存

IPv6の導入は進んでいますが、現在でも多くのネットワークはIPv4を使用しています。

IPv4とIPv6は異なるプロトコルであり、相互に互換性がないため、両者を同時に運用するための機構が必要です。これをIPv4とIPv6の共存(IPv4-IPv6共存)と呼びます。

IPv4とIPv6の共存では、ネットワークトランスレーション(NAT64)やデュアルスタックといった技術が使用され、双方のプロトコル間の通信を可能にします。

IPv4アドレスの枯渇対策

IPv4アドレスの枯渇対策として、アドレス再利用やプライベートIPアドレス、ネットワークアドレス変換(NAT)などの技術が利用されてきました。

NATは、グローバルIPアドレスをプライベートIPアドレスに変換する技術であり、多くのデバイスが単一のグローバルIPアドレスを共有することができるようになりました。

IPアドレスの管理

IPアドレスの管理は、インターネットアドレス空間を管理する組織によって行われています。国際的なIPアドレスの割り当ては、IANA(Internet Assigned Numbers Authority)によって行われ、地域ごとに分割されたアドレスは各地域の登録機関(RIR)によって割り当てられます。

類義語・類似サービス

プライベートIPアドレス

プライベートIPアドレスは、特定のプライベートネットワーク内で使用されるアドレスです。インターネット上では一意のアドレスではありません。プライベートIPアドレスは、ルーターやネットワークアドレス変換(NAT)を介してグローバルIPアドレスと通信する際に使用されます。プライベートIPアドレスの範囲は、IPv4では以下のブロックが割り当てられています:

10.0.0.0 ~ 10.255.255.255

172.16.0.0 ~ 172.31.255.255

192.168.0.0 ~ 192.168.255.255

ネットワークアドレス変換(NAT)

ネットワークアドレス変換(Network Address Translation)は、プライベートIPアドレスをグローバルIPアドレスに変換する技術です。NATを使用することで、複数のデバイスが同じグローバルIPアドレスを共有することができます。NATは、プライベートネットワーク内のデバイスがインターネットと通信する際に使用され、セキュリティやアドレス節約のために重要な役割を果たしています。

ローカルIPアドレス

ローカルIPアドレスは、特定のネットワーク内で使用されるアドレスですが、グローバルIPアドレスでもプライベートIPアドレスでもありません。ローカルIPアドレスは、ネットワーク内での通信やローカルサーバーへのアクセスなどに使用されます。一般的なローカルIPアドレスの範囲は、IPv4では以下のブロックが割り当てられています:

127.0.0.0 ~ 127.255.255.255(ループバックアドレス)

169.254.0.0 ~ 169.254.255.255(APIPA)

クロスサイトスクリプティング

概要

クロスサイトスクリプティング(Cross-Site Scripting、XSS)は、Webアプリケーションの脆弱性の一つであり、攻撃者が悪意のあるスクリプトをWebページ上に埋め込んで実行させることができる攻撃手法です。これにより、攻撃者はユーザーのセッション情報や個人データを盗み取ったり、Webページの内容を改ざんしたりすることが可能になります。

クロスサイトスクリプティングの攻撃手法は一般的に以下の3種類に分類されます。

Stored XSS(永続型XSS)

攻撃者が悪意のあるスクリプトをWebアプリケーションのデータベースやメッセージボードなどに永続的に埋め込む手法です。ユーザーがWebページを閲覧する際に、埋め込まれたスクリプトが実行されます。

Reflected XSS(反射型XSS)

攻撃者が悪意のあるスクリプトをURLのパラメーターやフォームの入力欄などに挿入し、ユーザーがそれをクリックしたり送信したりすると、スクリプトが実行されます。この攻撃はリンクや偽のフォームなどを利用してユーザーを誘導することが一般的です。

DOM-based XSS(DOMベースXSS)

攻撃者がWebページのJavaScriptコードを改変し、ユーザーのブラウザ上でスクリプトを実行する手法です。攻撃者はWebページ上のDOM(Document Object Model)を操作して悪意のあるスクリプトを実行します。

クロスサイトスクリプティングの対策方法としては、以下のような手法があります。

入力データのバリデーション

Webアプリケーションでユーザーから入力データを受け取る際に、適切なバリデーションとエスケープ処理を行います。特殊文字やHTMLタグなどの不正なデータを検出し、適切に処理することで攻撃を防ぎます。

サニタイズ(文字列の無害化)

入力データや出力データを無害化するために、特殊文字やHTMLタグをエスケープする処理を行います。これにより、ユーザーが入力したデータがスクリプトとして解釈されることを防止します。

HTTPヘッダーのセキュリティ設定

Webサーバーの設定やセキュリティヘッダーを使用して、ブラウザ側でXSS攻撃を検知したりブロックしたりすることができます。例えば、Content-Security-Policy(CSP)ヘッダーを使用することで、許可されたリソースのみが読み込まれるように制限することができます。

歴史

1996年ごろから2000年代初頭までの時期には、Webの成長とともにクロスサイトスクリプティングの脆弱性が顕在化しました。当初、Webアプリケーションのセキュリティ対策が不十分であり、入力値の検証やエスケープ処理が適切に行われていなかったため、攻撃者がスクリプトを埋め込んでユーザーのブラウザで実行させることが可能でした。

2005年には、Samy(サミー)というセキュリティ研究者がマイスペース(MySpace)というソーシャルネットワーキングサイトで大規模なクロスサイトスクリプティング攻撃を実行しました。Samyは自身のプロフィールに悪意のあるスクリプトを埋め込み、それが他のユーザーのプロフィールにも自動的に拡散される仕組みを利用しました。この攻撃は数十万人以上のユーザーに影響を与え、当時のWebセキュリティに対する重要性を浮き彫りにしました。

その後、Webブラウザのセキュリティ機能の強化やWebアプリケーションのセキュリティ対策の改善が進められました。W3C(World Wide Web Consortium)やOWASP(Open Web Application Security Project)などの組織がガイドラインやベストプラクティスを提供し、開発者や企業がセキュリティ対策を強化することが促されました。

現在では、多くのWebアプリケーションフレームワークやセキュリティツールがクロスサイトスクリプティング攻撃の対策を組み込んでおり、開発者が安全なコーディング手法を適用することが一般的となっています。また、ブラウザのセキュリティ機能も強化され、XSSフィルタリングやCSP(Content-Security-Policy)などの機能が提供されています。

類義語・類似サービス

クロスサイトリクエストフォージェリ(Cross-Site Request Forgery、CSRF)

クロスサイトスクリプティングと同様に、Webアプリケーションの脆弱性の一つです。攻撃者は被害者の権限を悪用して、意図しない操作を実行させるために偽のリクエストを送信します。

クリックジャッキング(Clickjacking)

攻撃者は透明なレイヤーを使って、ユーザーが意図しない操作を実行させるためにWebページを改ざんします。ユーザーは意識せずにクリックや入力を行い、攻撃者の意図する行動を実行してしまいます。

対義語

サニタイズ(Sanitize)

ユーザーが提供したデータや入力を適切に処理して、悪意のあるコードやスクリプトを無害なものに変換する処理です。サニタイズはクロスサイトスクリプティングの脆弱性を緩和するための重要な手段となります。

セキュアコーディング(Secure Coding)

ソフトウェア開発時にセキュリティの観点を考慮し、脆弱性を最小化するための実践です。セキュアなコーディングガイドラインに従い、適切な入力検証、データのサニタイズ、アクセス制御などの実装を行います。

クラスター

概要

クラスター(Cluster)は、ITおよびネットワークのコンピューティング用語であり、複数のコンピューターやサーバーをグループ化して一つのシステムとして動作させる仕組みを指します。クラスターは、処理能力の向上、可用性の向上、負荷分散などの目的で使用されます。

処理能力の向上

複数のコンピューターをクラスターとして組み合わせることで、計算処理やデータ処理の能力を高めることができます。複数のコンピューターが同時に処理を行うことで、より高速な処理が可能となります。

可用性の向上

クラスターは冗長性を持ち、一台のコンピューターに障害が発生した場合でも他のコンピューターが処理を継続できるようにします。これにより、システムの可用性が向上し、障害によるサービス停止を最小限に抑えることができます。

負荷分散

クラスターは複数のコンピューターで処理を分散することができます。負荷が高いタスクやリクエストを複数のコンピューターに均等に分散することで、全体のパフォーマンスを向上させることができます。

ハードウェアクラスター

物理的に接続された複数のコンピューターやサーバーをグループ化してクラスターを形成します。通常、高速なネットワーク接続で結ばれ、共有ストレージや専用のハードウェアコントローラーを利用します。

ソフトウェアクラスター

クラスター機能がソフトウェアレベルで実現されます。複数の仮想マシンやコンテナが同じクラスターに所属し、共有リソースを利用して処理を分散します。仮想化技術やコンテナ技術が使用されます。

共有ストレージ

クラスター内のコンピューターは共有のストレージにアクセスすることができます。これにより、データの一貫性を保ちながら処理を分散できます。

ロードバランサー

クラスター内のリクエストやトラフィックを均等に分散するためにロードバランサーが使用されます。ロードバランサーはクライアントからのリクエストを受け取り、適切なコンピューターに転送する役割を果たします。

フェイルオーバー

クラスター内の一台のコンピューターに障害が発生した場合、他のコンピューターがその処理を引き継ぐ仕組みが備わっています。これにより、サービスの中断を最小限に抑えることができます。

クラスターは大規模な計算処理や高可用性を要求するシステムにおいて広く使用されています。データベースクラスター、Webサーバークラスター、分散処理クラスターなど、さまざまな種類のクラスターが存在します。クラスターは効率的なリソースの活用とシステムの信頼性向上を実現する重要な技術です。

歴史

1970年代後半から1980年代初頭にかけて、大規模なコンピューターシステムが登場しました。これらのシステムは複数のプロセッサやメモリを持ち、高性能な処理を実現していました。この時代のシステムでは、分散コンピューティングのアイデアが既に存在しており、複数のコンピューターを組み合わせて協調動作させることで処理能力を向上させる試みが行われていました。

1990年代に入ると、クラスターの概念がより具体的に形成されていきました。特にBeowulfプロジェクトが注目されました。Beowulfは、NASAのドナルド・ベッカー(Donald Becker)とトーマス・スターリングス(Thomas Sterling)によって提唱された、低コストなパーソナルコンピューターを組み合わせて高性能なクラスターシステムを構築するアイデアです。Beowulfクラスターは、オープンソースソフトウェアやコミュニティの協力によって開発・普及しました。これにより、クラスターは研究機関や大学で広く利用されるようになりました。

2000年代以降、クラウドコンピューティングや仮想化技術の進化により、クラスターの普及がさらに進展しました。クラウドプロバイダーは、大規模なデータセンター内で複数のコンピューターをクラスター化し、リソースを効果的に利用することで、スケーラビリティや可用性の高いサービスを提供するようになりました。また、仮想化技術によって仮想マシンやコンテナをクラスター化し、柔軟なリソース管理やアプリケーションのデプロイメントが可能になりました。

現代では、クラスターは様々な分野で利用されています。ビッグデータ処理、人工知能、分散データベース、コンテンツデリバリーネットワークなど、大規模な処理や高可用性が求められる領域においてクラスターは不可欠な技術となっています。また、クラスターの発展とともに、自動スケーリング、負荷分散、障害回復など、さまざまな技術や手法が生まれています。

類義語・類似サービス

グリッドコンピューティング(Grid Computing)

グリッドコンピューティングは、複数のコンピューターを地理的に分散した環境で組み合わせ、大規模な計算やデータ処理を行うための技術です。クラスターは通常、単一のデータセンターやネットワーク内で構成されますが、グリッドコンピューティングでは異なる場所にあるリソースを利用して処理を分散します。

クラウドコンピューティング(Cloud Computing)

クラウドコンピューティングは、インターネットを通じてリソースやサービスを提供するモデルです。クラウドは複数の物理的なサーバーやデータセンターで構成され、仮想化技術によってリソースの共有やスケーリングが可能となっています。クラウドでは、複数の仮想マシンやコンテナがクラスター化されてリソースを共有し、効率的な処理やサービス提供が行われます。

ロードバランシング(Load Balancing)

ロードバランシングは、ネットワークやサーバーにかかる負荷を均等に分散する技術です。複数のサーバーがクラスター化され、負荷分散装置がリクエストを適切に分散することで、処理能力の最大化や応答時間の最適化を実現します。ロードバランシングはクラスターにおいて高可用性とスケーラビリティを実現する重要な要素です。

シングルトン(Singleton)

シングルトンは、プログラム内において唯一のインスタンスを保証するデザインパターンです。クラスターとは対照的に、シングルトンは単一のインスタンスのみを持ちます。シングルトンは特定のリソースに対して単一のアクセスポイントを提供し、競合状態やリソースの重複使用を回避します。

クエリ

概要

クエリ(Query)は、ITおよびネットワークの分野で使用される用語であり、データベースや検索エンジンなどの情報システムに対して情報の検索や取得を要求するための命令や問い合わせを指します。クエリは特定の条件やパラメータに基づいてデータをフィルタリング、ソート、集計するために使用されます。

クエリは、情報を抽出するための構造化された要求や問い合わせです。一般的なクエリ言語としては、SQL(Structured Query Language)が広く使用されています。SQLはデータベース管理システム(DBMS)で使用され、テーブルや関係データベース内のデータを操作および検索するためのクエリを記述するための言語です。

クエリの具体的な使用例としては、以下のようなものがあります。

データベースクエリ

データベース内のテーブルから特定の条件に合致するデータを検索するためのクエリ。例えば、""SELECT""文を使用してデータを抽出したり、""INSERT""文を使用してデータを追加したりすることができます。

検索エンジンクエリ

インターネット検索エンジン(例:Google)に対してキーワードやフレーズを入力して情報を検索するためのクエリ。検索エンジンはクエリを解析し、関連する情報を検索結果として返します。

ネットワーククエリ

ネットワーク管理やトラブルシューティングのためにネットワーク機器に対して送信される問い合わせ。例えば、pingコマンドやトレーサートレースコマンドなどがネットワーククエリの一例です。

クエリは情報を効率的に抽出し、必要な情報を取得するための重要な手段です。正確なクエリの作成や適切な条件の設定は、データの効果的な利用やシステムのパフォーマンス向上に貢献します。

歴史

初期のデータ処理システム

クエリの概念は、データ処理システムが初めて導入された1960年代から存在しました。当初は磁気テープや磁気ディスクなどのメディアに格納されたデータに対して、低レベルのプログラミング言語やコマンドを使用して操作が行われていました。

データベース管理システム (DBMS) の登場

1970年代には、データベース管理システム(DBMS)の登場により、データの効率的な管理と操作が可能になりました。DBMSはデータベースの構造化と管理を担当し、クエリ言語を通じてデータの抽出や更新を行うことができるようになりました。

SQLの発展

1970年代後半にIBMのエドガー・F・コッド博士によって提案されたSQL(Structured Query Language)は、関係データベース管理システム(RDBMS)における標準的なクエリ言語として広く受け入れられました。SQLはデータベース操作を行うための高レベルな文法とコマンドを提供し、データの検索、挿入、更新、削除などの操作が行えます。

オブジェクト指向データベースの台頭

1990年代になると、オブジェクト指向データベースが注目され、クエリ言語もオブジェクト指向の特性に対応するために拡張されました。この時期にはオブジェクト指向クエリ言語(例:OQL)が提案され、オブジェクト指向データベースにおけるデータ操作が可能になりました。

分散データベースとWebの普及

1990年代後半から2000年代にかけて、インターネットとウェブの普及により、クエリの範囲が拡大しました。分散データベースシステムやウェブ検索エンジンにおいて、ユーザーはキーワードやフレーズを入力して情報を検索するクエリを利用するようになりました。

クラウドコンピューティングとビッグデータ

近年では、クラウドコンピューティングとビッグデータの台頭により、大規模なデータセットの処理と分析が求められています。クエリ技術も進化し、分散データ処理フレームワーク(例:Apache Hadoop)や分散クエリエンジン(例:Apache Spark)が開発され、大規模なデータセットに対する高速なクエリ処理が可能になりました。

類義語・類似サービス

データベースクエリ言語(Database Query Language)

データベースクエリ言語は、データベース管理システム(DBMS)に対してクエリを実行するための言語です。代表的なデータベースクエリ言語としては、SQL(Structured Query Language)があります。SQLは関係データベースモデルに基づいてデータの操作や検索を行うための標準化された言語です。

検索エンジン

検索エンジンは、インターネット上の情報を索引化し、ユーザーがキーワードを使用して情報を検索できるようにする仕組みです。ユーザーが検索クエリを入力すると、検索エンジンは索引データベースを検索し、関連する情報を表示します。代表的な検索エンジンとしては、GoogleやBingなどがあります。

API(Application Programming Interface)

APIは、ソフトウェアやサービス間で情報や機能をやり取りするためのインターフェースです。APIを使用することで、外部のアプリケーションやサービスがクエリを送信してデータの操作や検索を行うことができます。例えば、Twitter APIを使用して特定のハッシュタグに関連するツイートを取得するなどの操作が可能です。

データウェアハウス

データウェアハウスは、異なるデータソースからのデータを統合し、分析や報告などの用途で利用するためのデータベースです。データウェアハウスでは、クエリを使用してデータの抽出や集計を行い、意思決定やビジネスインテリジェンスに活用されます。

対義語

コマンド(Command)

コマンドは、特定のアクションや操作を指示するための命令です。クエリが主にデータベースや情報システムに対してデータの取得や操作を指示するのに対して、コマンドはより広範なアクションを指示することがあります。

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