ランサムウェア
概要
ランサムウェア(Ransomware)は、IT/ネットワークセキュリティの分野でよく知られている悪意のあるソフトウェアの一種です。このタイプのマルウェアは、被害者のデータやシステムを暗号化し、データへのアクセスを制限します。そして、被害者に身代金(ランサム)の支払いを要求します。ランサムウェアは、個人や企業、政府機関など、さまざまな組織や個人に対して広範囲に攻撃されることがあります。
ランサムウェアの攻撃は、一般的に以下の手順で行われます。
侵入
ランサムウェアは、メールの添付ファイル、不正なリンク、悪意のある広告など、さまざまな手法を使ってシステムに侵入します。一度システムに侵入すると、ランサムウェアはバックドアや脆弱性を悪用して他のシステムにも広がることがあります。
感染
ランサムウェアがシステムに侵入すると、感染が開始されます。ランサムウェアはデータやファイルを暗号化し、被害者がそれらにアクセスできないようにします。一部の高度なランサムウェアは、システムの制御を奪い、ファイルを削除したり、重要なシステムファイルを暗号化することもあります。
身代金要求
暗号化が完了すると、ランサムウェアは被害者に身代金の支払いを要求します。一般的には、暗号化を解除するための鍵や復号ツールを提供するために、仮想通貨(Bitcoinなど)での支払いを要求します。身代金の額は攻撃者によって異なり、数百ドルから数千ドル以上になることもあります。
復号化
被害者が身代金を支払うと、攻撃者は暗号化を解除するための鍵や復号ツールを提供する場合があります。しかし、支払いを行っても攻撃者が復号化ツールを提供しない場合や、提供されたツールが機能しない場合もあります。
ランサムウェアは、被害者に重大な損失やデータの永久的な消失をもたらす可能性があります。また、一部のランサムウェアはネットワーク全体に広がり、複数のシステムやサーバーを同時に攻撃することもあります。そのため、ランサムウェア対策としては、定期的なデータのバックアップ、アンチウイルスソフトウェアの使用、セキュリティパッチの適用など、包括的なセキュリティ対策が重要です。
ランサムウェアの形態や攻撃手法は進化しており、組織や個人は常に最新の脅威に対応する必要があります。また、セキュリティ企業や研究者も新たなランサムウェアの特徴や脆弱性を分析し、対策を開発しています。
歴史
1980年代
ランサムウェアの原型が登場しました。最初のランサムウェアは、コンピューターユーザーに対して料金を請求するもので、フロッピーディスクなどの媒体を通じて感染しました。
2005年
最初の大規模なランサムウェア攻撃である"Gpcode"が発生しました。この攻撃では、ファイルをRSA暗号で暗号化し、身代金の支払いを要求しました。しかし、攻撃者の鍵が見つかり、解読ツールが公開されたため、被害は一時的なものでした。
2010年
"CryptoLocker"が登場し、ランサムウェアの攻撃手法が進化しました。CryptoLockerは、AES暗号化を使用して被害者のファイルを暗号化し、復号化キーを提供する代わりに身代金の支払いを要求しました。この攻撃は大きな被害をもたらし、多くの組織や個人がデータを失いました。
2013年
"CryptoLocker"の成功を受けて、さまざまなバリエーションのランサムウェアが登場しました。"CryptoWall"、"TeslaCrypt"、"Locky"などがその代表例です。これらのランサムウェアは、より高度な暗号化アルゴリズムを使用し、支払い手段として仮想通貨(主にBitcoin)を要求するようになりました。
2017年
"WannaCry"と呼ばれるランサムウェア攻撃が世界中で大規模に発生しました。この攻撃は、Windowsの脆弱性を悪用して感染し、数十万台のコンピュータに被害をもたらしました。WannaCryは、国家機関が関与しているとされ、その影響は広範囲にわたりました。
類義語・類似サービス
スパイウェア(Spyware)
スパイウェアは、ユーザーの個人情報や行動を盗むために設計されたマルウェアの一種です。スパイウェアはバックグラウンドで動作し、ユーザーの活動を監視し、個人情報やパスワードなどを不正に入手します。ランサムウェアとは異なり、スパイウェアはデータを暗号化したり身代金を要求したりすることはありません。
ウイルス(Virus)
ウイルスは、コンピュータープログラムやファイルに感染し、自己複製して他のファイルに広がる悪意のあるソフトウェアです。ウイルスはデータの破壊やコンピュータの動作の妨害を目的としており、ランサムウェアのようにデータを暗号化して身代金を要求することはありません。
対義語
セキュリティソフトウェア(Security Software)
セキュリティソフトウェアは、ウイルスやマルウェアなどの悪意のあるソフトウェアからシステムを保護するために使用されます。セキュリティソフトウェアは、侵入や攻撃を検出し、防御する役割を果たします。ランサムウェアはセキュリティソフトウェアの回避を試みるため、セキュリティソフトウェアとは対抗関係にあります。
バックアップ(Backup)
バックアップは、データやシステムのコピーを作成し、別の場所に保存することです。バックアップを取ることはランサムウェアの攻撃やデータの損失に対する保険となり、被害を最小限に抑えることができます。