ルーティング
概要
ルーティングは、コンピューターネットワークにおいて、データパケットの送信経路を決定するプロセスまたはその仕組みを指します。データパケットは送信元から宛先へと転送される際、複数のネットワークを経由することがあります。この際、ルーティングはパケットの正しい経路を選択し、宛先に効率的に到達させる役割を果たします。
ルーティングは、ルーターと呼ばれるネットワークデバイスが行います。ルーターはネットワーク上の接続点であり、パケットの転送やネットワーク間の通信を制御します。ルーターはパケットのヘッダ情報を解析し、宛先IPアドレスに基づいて適切な経路を選択します。
ルーティングの目的は、パケットを最適な経路で転送することです。最適な経路は、パケットの宛先ネットワークに対して最も効率的で高速な経路です。ルーターはルーティングテーブルと呼ばれるデータベースを保持し、宛先IPアドレスと対応する経路情報を参照してパケットの転送を行います。ルーティングテーブルには、ネットワーク間の接続情報や経路のコストなどが含まれます。
ルーティングにはさまざまなアルゴリズムやプロトコルが使用されます。一般的なルーティングプロトコルには、OSPF(Open Shortest Path First)、BGP(Border Gateway Protocol)、RIP(Routing Information Protocol)、EIGRP(Enhanced Interior Gateway Routing Protocol)などがあります。これらのプロトコルは、ネットワークのトポロジー情報を交換し、ルーター間で経路情報を学習して更新します。
また、ルーティングには静的ルーティングと動的ルーティングの2つの方法があります。静的ルーティングでは、管理者が手動で経路情報を設定し、更新や変更が必要な場合には手動で行います。一方、動的ルーティングでは、ルーティングプロトコルが自動的に経路情報を交換し、最適な経路を決定します。動的ルーティングはネットワークの変更に対して柔軟に対応できるため、大規模なネットワーク環境ではより一般的に使用されます。
ルーティングは、インターネットや企業内ネットワークなどの大規模なネットワーク環境で重要な役割を果たしています。適切なルーティング設定により、ネットワークの効率性や可用性を向上させることができます。
歴史
1960年代から1970年代初頭:初期のネットワークとルーティング
1969年にARPANETが誕生し、初期のコンピューターネットワークが構築されました。
当初はホストベースのルーティングが使用されており、各ホストが独自の経路テーブルを持ち、ネットワーク間の接続を実現していました。
1970年代後半から1980年代初頭:ゲートウェイとルーティングテーブルの登場
ゲートウェイ(Gateway)と呼ばれるデバイスが導入され、ネットワーク間の通信を制御する役割を担いました。ゲートウェイは複数のネットワークに接続し、ルーティングテーブルを使用してパケットの転送を行いました。ルーティングテーブルは手動で設定され、ネットワーク間の経路情報が静的に管理されました。
1980年代後半から1990年代:ルーティングプロトコルの発展と動的ルーティングの普及
1980年代後半から1990年代にかけて、ルーティングプロトコルの開発が進みました。インテリジェントルーティングプロトコル(Interior Gateway Protocol、IGP)とエクステリアゲートウェイプロトコル(Exterior Gateway Protocol、EGP)が登場しました。IGPでは、ルーター同士が経路情報を交換し、最適な経路を決定する動的ルーティングが普及しました。
1990年代には、オープンなルーティングプロトコルであるOSPF(Open Shortest Path First)やBGP(Border Gateway Protocol)などが開発されました。
2000年代以降:スケーラブルなルーティングとSDNの出現
2000年代以降、インターネットの急速な成長に対応するため、スケーラブルなルーティングアーキテクチャの開発が進みました。マルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)などの技術が導入され、高速かつ柔軟なパケット転送が可能になりました。
近年では、ソフトウェア定義ネットワーキング(SDN)の登場により、ルーティングの制御と管理がソフトウェアによって行われるようになりました。
このように、ルーティングはネットワークの進化とともに発展してきました。ネットワークの規模や要件に応じて、さまざまなルーティング技術とプロトコルが開発され、ネットワークの効率性と信頼性を向上させる役割を果たしています。
類義語・類似サービス
スイッチング(Switching)
スイッチングは、データパケットの転送を制御する技術であり、ネットワーク内のデバイス間での通信を担当します。ルーティングはネットワーク間の通信を制御するのに対し、スイッチングはネットワーク内の通信を制御します。スイッチングハブやL2スイッチが一般的なスイッチです。
スタティックルーティング(Static Routing)
スタティックルーティングは、ネットワーク管理者が手動で経路情報を設定する方式です。経路情報は固定されており、変更がある場合には手動で更新する必要があります。対義語としては、ダイナミックルーティング(Dynamic Routing)があります。
ルーティングプロトコル(Routing Protocol)
ルーティングプロトコルは、ネットワークデバイス間で経路情報を交換し、最適な経路を決定するための通信プロトコルです。代表的なルーティングプロトコルには、OSPF(Open Shortest Path First)、BGP(Border Gateway Protocol)、RIP(Routing Information Protocol)などがあります。
ロードバランシング(Load Balancing)
ロードバランシングは、トラフィックを複数のネットワークパスに分散させる技術です。複数のルートが利用可能な場合、トラフィックの負荷を均等に分散させることで、ネットワークのパフォーマンスや信頼性を向上させます。ロードバランサーと呼ばれるデバイスが使用されます。
ネットワークアドレス変換(Network Address Translation, NAT)
NATは、プライベートIPアドレスをグローバルIPアドレスに変換する技術です。ルーティングとは異なり、主にネットワークアドレスの変換や通信セッションの管理に関与します。NATは特にIPv4アドレス枯渇の問題を解決するために使用されます。