家庭用と法人用はどれだけ違うの?会社で気を付けるべき無線LAN構築ポイント
スマートフォンやタブレット、モバイルノートPCの普及にともない、無線LAN環境も拡大・整備され、今や当たり前のようにWi-Fiが使える時代。オフィスも例外ではなく、無線LANを導入する企業が増えている。しかし、オフィスで無線LAN環境を構築しようとした場合、適切な機器選定やアクセスポイントの配置などわからないことも多い。特にやりがちなケースが家庭用の無線LANルーターで繋いでしまい、接続がスムーズにできないといったものだ。盲点になりやすく、情シスマンたちの頭を悩ませる…そんな無線LANの迷宮に一歩踏み出そうとしている“情シス”がここにもひとり──
にのまえくん!ちょっと相談があるんだよ!
来週から営業部をフリーアドレス制にしたいんだ!
な、何ですか唐突に…!ふ、ふりーあどれす?
昨日テレビで見たんだよ!
イノベーションを起こすにはフリーアドレスのオフィスが良いって!だからオフィスで無線LANを使えるようにしてくれ!
頼んだぞ!
え、ちょ、え、え、えぇーーー!?
また無茶ぶりぃー!!
…仕方ない、自宅で構築してるし、適当に設置して
動かせば大丈夫だろ!よし!やるか!
はじめくん…この前はいたずらしてごめんよ!
えーと、Dr. プロトコルさんでしたっけ…
何なんですか?僕忙しいんですよ
そんなこと言わないでくれよ!
私にはキミ以外にトモダチがいないんだ…
お詫びの印にこれを持ってきたんだよ…
俺たちいつからトモダチになったんでしたっけ…?
えーと、ちょっと時期過ぎてるけど御中元…?なんだろう?
こ、これは!無線LANルーター!?え!いいんですか!?
いいんだよ~!ちょうど無線LAN環境を構築しようとしているんだろう? 使ってくれよ!それじゃ、私はこれで!(ブォン)
いつもどこからやってくるのか謎だけど…ありがとうございます!
うん、これは自宅で使ってるやつの後継機種みたいだ!
操作の勝手がわかるから助かるなぁ
──── 構築した翌日 ────
ちょっと、ちょっと!にのまえくん!
全然Wi-Fi繋がらないじゃないか!切断も多いし!
どうなってるんだ!?早く直してくれ!
ちょ、ちょっと待ってください!
なぜなんだ!?正しく設定はしてあるし
無線LAN構築で困っている、そこのキミ!
情シスマンさん…!
助けてください!無線LANが全然快適に動作しなくて…!
何がダメなのかわからないんです!
ふむ、これは家庭用の無線LANルーターだ!
無線LAN環境は家庭用と法人用ではまったく異なる。
だから構築の仕方も違うんだ!
この違いを夏休みの自由研究としてキミに出してもらいたいところだが まずは社内の環境を見直さなければならんな。
一緒に見ていこう!
調査
- 接続できない、切断されるなど自社構築した無線LANの運用にトラブルが多い
- これから社内に無線LAN導入をしたい、導入のポイントを知りたい
- 法人用の無線LANについて知りたい
家庭用と法人用で一体何が違うんですか!?
俺はてっきりどちらでも使えることに変わりはないって思ってました… 法人用のほうが少し高級品で壊れにくいかも?
くらいにしか認識してなかった…
家庭用無線LANルーターは、一般住宅など広さがある程度限られた場所で使うことを想定されている。 オフィスのような広いエリアをカバーすることは難しいし、同時に接続できる台数も少ないから何十人ものアクセスには耐えられない。だからといって家庭用無線LANルーターを複数台設置すれば、今度は電波干渉を引き起こして通信速度が低下したり、切断されやすくなるんだ
そうだったんですね…!
だから法人用の機器を利用して、
自社にあわせた配置設計をする必要があるのか!
オフィスで無線LAN環境を構築する場合、オフィス全体をカバーするために複数のアクセスポイント(AP)※の設置が必要になる。しかも、エリア内にくまなく電波が届き、かつ干渉が起こらない適切な配置を導きださないといけない。
※アクセスポイント(AP)…無線LAN通信を行うための電波を周囲に飛ばすための機器。無線LANと有線LANを仲介する役割を持つ。一般的に家庭用のものはルーター機能とAP機能の両方を搭載しており、無線LANルーターと呼ばれる。単にAPといわれる場合は、ルーター機能は含まれない。
げげぇ…難しそう…!でも納得です
そういえば、家庭用なら1台でルーター機能とAP機能の両方が付いているけど、法人用にはルーター機能は付いてるんですか?
付いている製品もあるが、オフィスなどでの環境構築で複数台のAPを設置する場合、既存のルーターでルーティングを行うため、APそれぞれにルーター機能は必要ない。もしAP1台ごとにルーター機能が稼働していたら管理が複雑になる上、機器コストも高額になってしまうからな
確かに…複数台設置するとなると何か問題があったときに、
APごとにひとつひとつ管理しないといけないのは大変ですね!
法人用の無線LAN環境では、複数のAPをコントローラで一括管理することが一般的だ。
しかし、コントローラを構築するには、専用のサーバーを立てなければならないし、管理者も必要になってしまう。
コントローラがクラウド化されているサービスもあるから、そちらを使うのもいいだろう
サーバーを立てるとなるとハードウェアの調達や運用・保守コストがかかるし嫌だなぁ…クラウドのほうが導入簡単でいいですね!
よし、設計はほぼ見直したぞ!
あとは配置だけど…
APが干渉しないようするにはどうしたらいいですか?
P同士が干渉しないように配置設計するには専門知識が必要な部分がある。隣接ビルや別フロアからの干渉や、変わったデザインの建物だと物理障害があったりするからな
なんと…えぇ~!じゃあどうしよ~!
配置してテストしてみて、ダメだったら配置を直して…ってそんな感じなんですか!?一括でぐあーっと何かできないんですか!?
Wi-Fiサーチャーをオン!光ファイバーテイルコネクト!
「ビジネスWi-Fi」展開!
Wi-Fiサーチャー
情シスマンのベルト部分についているWi-Fiルーター型のサポート武器。アクセスポイントを立てるだけでなく、トラフィックスカウターとしても役に立つ。
USEN GATE 02「ビジネスWi-Fi」はAPのコントローラをクラウド化し、異なる拠点でも一括管理できる 自動的に電波の出力設定を行うから、電波干渉を避けた設計もできるぞ
やったぁ!これならとりあえず快適に無線LAN接続ができます!
部長に怒られずに済むぞぉ!ひゃっほー!
最後に無線LAN通信を利用するなら、
通信規格と周波数帯も知っておくといい。
これらは家庭用と法人用で違いはなく、
無線LANにおける一般的な規格だ。特徴を覚えておくと便利だぞ。
無線LANの通信規格
規格 | 利用する周波数帯 | 最大通信速度(理論値) | リリース時期 |
IEEE802.11b | 2.4GHz | 11Mbps | 1999年 |
IEEE802.11a | 5GHz | 54Mbps | 1999年 |
IEEE802.11g | 2.4GHz | 54Mbps | 2003年 |
IEEE802.11n | 2.4GHz | 600Mbps | 2009年 |
5GHz | |||
IEEE802.11ac | 5GHz | 6.9Gbps | 2014年 |
IEEE802.11ax | 2.4GHz | 9.6Gbps | 2020年ごろ |
5GHz |
周波数帯の違い
2.4GHz | 5GHz | |
メリット |
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デメリット |
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ひとまず無事解決したようだな!強い情シスが企業を伸ばす!
また会おう!さらばだ!
解決
家庭用と法人用の違いを知らず、実は家庭用の無線LANルーターを使用していた…という企業は意外と多い。家庭用のほうが安価だから…とコスト事情もあるようだが、オフィスなどで環境を構築する場合は、法人用の機器を利用し、適切に構築する必要がある。アクセスポイントを複数台設置すれば電波が行き渡り、大勢の社員が接続できると安易に考えるのは危険だ。快適に通信するためには自社の状況に合わせた設計を行い、通信規格や周波数帯にも気を配るといいだろう。とはいえ、これらの工程はなかなかに骨が折れ、専門知識が必要だ。運用まで快適にするのであれば、コントローラまで含まれた無線LAN構築/設計サービスを検討するのも手だ。
- アクセスポイントのコントローラ機能をクラウド化
- 離れた拠点間のAPでも遠隔監視、制御など一元管理が可能
- 初期費用と導入費用を考えたリーズナブルな料金体系
本記事の著者
情シスマン
本メディアの主人公。職業はヒーローで、趣味はトラフィック監視。様々な武器を駆使して情シスにまつわる問題や悩みを解決している。ITをよく知らないのに、情シス担当になってしまった人の味方です。いや、正義の味方じゃなく、正義そのもの。困っている人がいたら、助けたいお人よし。