オフィスで快適に使えるWi-Fi速度の目安は?速度が遅い原因と対処法を解説
業務効率化のために、いまやインターネットの利用は欠かせないですが、業務を快適に進めるためには高速な通信速度や安定した通信品質が重要です。では、高速で安定した通信環境を維持するために、どのようなWi-Fi環境が必要なのでしょうか。
本記事では、業務を快適に行うためのWi-Fiの通信環境の目安について解説します。また、Wi-Fiが快適に使えなくなる原因や対処法についても紹介していきますので、社内の通信環境を見直し、効率的にインターネットを利用できるようにしましょう。
そもそもWi-Fiとは
普段の生活の中で私たちが「Wi-Fi」と言うとき、「無線のインターネット回線」という意味で使われることが多いですが、厳密には違います。
基本的には、インターネット通信はLANケーブルや光ファイバーなどの固定回線を用いて行われます。世界中のパソコンやサーバーが繋がり合っているインターネットは物理的につながっているのです。このとき、インターネット網の末端部分とユーザーが実際に操作するパソコンやスマホなどのデバイスとの間の通信を無線にすることで、ケーブルから開放され自由度が高まるのですが、この無線通信の規格のことをWi-Fiと呼びます。
つまり、Wi-Fiというのはインターネット通信を行うネットワークの一部分のみを指すものなのです。Wi-Fiの先には必ず固定回線があって、物理的に繋がり合っています。
そのため、無線のインターネット通信を快適に行うためには、Wi-Fiの品質とインターネット回線の品質、両方が高くないといけません。
Wi-Fiについて詳しく知りたい方は、以下のコラムを読んでいただきたいのですが、このコラムでは、Wi-Fiを本来よりも広い意味で捉え、「無線のインターネット通信」というようなニュアンスで解釈します。その前提で、無線で快適なインターネット通信を実現するために必要なことをご紹介していきます。
通信速度の単位は「bps」
インターネットの回線速度は「bit per second」の略で「bps(ビーピーエス)」という単位で表します。bit(ビット)というのはデータ量を表す単位で、1秒あたりに転送できるデータ量を示すことで速度を表しているのです。つまり、1秒間に転送できるデータ量が多いほど、通信速度が速いということです。
また、数値が非常に大きくなることがあるので、以下のように1000ごとに単位を変えることで、わかりやすく表現しています。
- 1kbps(キロ)=1000bps
- 1Mbps(メガ)=1000kbps
- 1Gbps(ギガ)=1000Mbps
インターネット通信における「上り」と「下り」
インターネット通信には「上り(のぼり:アップロード)」と「下り(くだり:ダウンロード)」の2つの方向があり、それぞれ速度が異なることがあるので、注意が必要です。
端末のデータをインターネット上にアップロードするときの速さが「上り」で、インターネット上のデータを端末にダウンロードするときの速さが「下り」です。
メールの受信やWebサイトの閲覧、動画の視聴など、インターネット上の情報を取得する場合は、下りの速度が重要になります。反対に、インターネットへ情報を提供する場合には上りが重要になります。Web会議のように「上り」と「下り」の両方が重要となる場合もあります。
◆「下り」の通信の例
- メールの受信
- SNSやWebサイトの閲覧
- 動画の視聴
- アプリや画像、動画のダウンロード
- オンラインゲームの読み込み
- Web会議で相手の映像と音声を取得する場面 など
◆「上り」の通信の例
- メールの送信
- SNSやブログの投稿
- 動画の投稿
- Web会議でこちらの映像と音声を相手へ届ける場面 など
仕事で快適に使えるWi-Fi速度の目安
Wi-Fiの通信速度を表す単位について説明してきましたが、具体的にどのくらいあれば快適に利用できるのでしょうか。必要な通信速度は、用途により異なりますが、業務でよく使うのは以下のような用途でしょうか。
- メールの送受信
- Web会議
- ファイルの共有
オフィスでの各ツールで快適に利用するために必要な通信速度の目安をまとめました。
用途 | 必要な通信速度の目安 |
---|---|
メールの送受信 | 10Mbps程度 |
Web会議 | 30Mbps程度 |
ファイルの共有 | 50~100Mbps程度 |
オフィスで利用するなら1Gbps程度
自宅でオンラインミーティングを快適に行うには、30Mbps程度の回線速度があれば十分ですが、オフィスでは多くの場合、大人数が一斉に通信回線を利用するため、それよりも大容量の通信回線が必要となります。
つまり、30人が同時にWeb会議を行う場合、30Mbps × 30人 = 900Mbps 程度の速度が望ましいということです。
そのため、自宅で利用するための回線に比べて大容量の通信回線が必要なのです。オフィスで快適にインターネットを利用するためには、少なくとも1Gbps(1000Mbps)程度はあったほうがいいでしょう。
Wi-Fi速度を調べる方法
通信速度が遅いと感じたら、まずは実際にどのくらいの速度が出ているかを把握してみましょう。Wi-Fiの速度は、以下サイトで調べることができます。
- Fast.com
- USEN スピードテスト
- Google の「インターネット速度テスト」
Wi-Fiの通信速度は、測定するサイトや測定する時間帯などによってばらつきが生じるため、あくまでも目安のひとつとして捉えてください。
Wi-Fiの速度が遅い原因
オフィスでのWi-Fiの速度が遅ければ、業務にも支障をきたすため、改善する必要がありますが、まずは速度が遅い原因を確かめなければなりません。
Wi-Fiの速度が遅くなる主な原因は以下の通りです。
- 接続しているパソコンに問題がある
- 接続しているデバイスの台数が多い
- Wi-Fiルーターの置き場所が悪い
- Wi-Fiルーターが高速通信に対応していない
- プロバイダー(ISP)に問題がある
- インターネット回線事業者に問題がある
それぞれ詳しく説明していきます。
接続しているパソコンに問題がある
インターネット回線の速度は速くても、接続しているパソコンに問題があると、快適に操作できないため、通信速度が遅いように感じることがあります。
考えられる要因としては以下の通りです。
- CPUが古く処理能力が悪い
- パソコンのメモリが不足している
- ブラウザのバージョンが最新のものになっていない
このような問題がないか、パソコンの設定画面などから確認してみましょう。
接続しているデバイスの台数が多い
自社のWi-Fi速度が遅い場合、どれくらいの機器がルーターに接続されているかを確認してみましょう。
接続台数が多ければ、ルーターが多くの機器と送受信することになるため、負荷がかかり、速度が遅くなってしまうのです。
Wi-Fiルーターには、それぞれ同時接続の推奨台数が定められていますが、それを超えていればWi-Fi速度が遅くなる恐れがあります。
Wi-Fiルーターの置き場所が悪い
Wi-Fiルーターを置く場所によっても通信速度が左右されます。
以下のケースでは電波を遮り通信が不安定になることがあるので注意しましょう。
- 近くに床や壁、棚などがある
- 近くに電化製品がある
- 近くに水槽がある
電波を遮る原因となるのは物理的障壁のほか、電波を吸収する性質がある水や、Wi-Fiの電波と干渉する家電などがあります。
Wi-Fiルーターが高速通信に対応していない
ルーターによって、対応しているWi-Fiの規格が異なります。古いWi-Fi規格の場合、最大通信速度は遅くなります。通信速度は遅い方に依存するので、インターネット回線の速度が速かったとしても、ルーターが高速通信に対応していなければ通信速度は遅くなってしまいます。
例えば、1Gbpsのインターネット回線を利用していても、Wi-Fiルーターが100Mbpsまでしか対応していない場合、最大の通信速度は100Mbpsになってしまうということです。
プロバイダー(ISP)に問題がある
インターネットサービスプロバイダー (ISP) は、インターネットへの接続サービスを提供する企業です。ISPが提供する帯域幅が限られている場合、多くのユーザーが同時に接続すると通信速度が低下します。
つまり、ISPの設備のキャパシティに対し、それを超えるようなユーザーがいるとすると、通信経路が逼迫して、通信に遅延が発生しやすいということです。
また、最新の接続方法であるIPoEに対応したプロバイダーを選択することで、Wi-Fiの速度が改善することもあります。IPoEとは、従来のIPv4ではなくIPv6という新しいプロトコルを利用した接続方法です。
インターネット回線事業者に問題がある
インターネット回線事業者に問題がある場合もあります。
NTT東日本・西日本に代表されるインターネット回線事業者は、設備あたりのセッション(ユーザー数)が規定の上限に達すると設備を増強することにしています。
しかし、近年の動画コンテンツやクラウドサービスの普及によって、一人あたりの通信量が増え、ユーザー数は規定の上限に達していなくても、通信経路を流れるトラフィック量は逼迫しているという状況が起こっています。これを輻輳(ふくそう)といいます。
Wi-Fiの速度が遅いときの対処法
Wi-Fiの速度が遅いとき、原因によってはすぐに対処できるものもあれば、設備の買い替えや契約の乗り換えが必要な場合もあります。
ここでは、Wi-Fiの速度を高速化するための対処法について説明していきますので、チェックしてみてください。
パソコン・通信機器を再起動する
パソコンや通信機器に問題がある場合、再起動することでトラブルがリセットされ、通信速度が安定する可能性があります。ただし、再起動する前にデータの保存を忘れずに行いましょう。
また、パソコンは起動させた状態のままにしておくとファイルやエラーが蓄積し、通信速度が遅くなる原因となるため、使用後はシャットダウンするのが望ましいです。
Wi-Fiルーターを最新の状態にする
Wi-Fiルーターの不具合が疑われる場合、ルーターの再起動を試してみると、通信状態がリセットされ、改善する可能性があります。また、ルーターのファームウェアを最新バージョンにアップデートすると、不具合が解消される場合もあります。
ルーターのメーカーのサイトをチェックして、更新手順を確認してみましょう。
Wi-Fiルーターの位置を変える
先述した通り、Wi-Fiルーターの置き場所によっても通信速度が変わってきます。
そのため、ルーターを置く位置や周辺環境を以下のように工夫してみましょう。
- ルーターとデバイス間の障害物をなくす
- ルーターとデバイス間を分厚い壁で隔てない
- ルーターとデバイスをなるべく近くに置く
- ルーターを床から1mほどの高さに置く
- ルーターは電波を発する家電のそばに置かない
- ルーターを水回りの近くに置かない
高スペックなWi-Fiルーターに買い替える
ルーターの位置を変えたり、パソコンの状態を改善しても通信速度が改善しない場合、Wi-Fiルーターの買い替えを検討してみましょう。
同じルーターを長年使用しているのであれば、経年劣化により通信の不具合が発生している恐れもありますし、ルーターが古く低スペックであれば現在の使用環境に対応していない可能性が高いです。
高スペックなWi-Fiルーターは、低スペックなものより多少費用がかかりますが、安定した通信速度が得られるでしょう。
有線接続する
LANケーブルが不要な無線LANはオフィスがすっきりしますが、室内に置かれているものの影響を受けやすく、Wi-Fiの接続が不安定であったり、速度が遅かったりすることがあります。
その場合は、パソコンとルーター間の有線LAN接続をすれば、速度が安定する場合もあります。
回線事業者やプロバイダーを変更する
回線事業者やプロバイダーが原因でインターネット回線の通信速度が遅い場合、通信障害やメンテナンスなどが理由ではなければ、別に乗り換えることで改善する可能性があります。
プロバイダーが通信速度に影響する要因は以下の通りです。
- 利用者の数が多い
- プロバイダーが保有する設備に問題がある
- 古い通信方式を利用している
- 通信制限を設けている
プロバイダーに問い合わせてみたり、同じプロバイダーでオプションやプランを変えたりしても問題が解決しない場合は、プロバイダーの乗り換えを検討してみるのも有効です。
一般的なインターネット利用では、20〜30Mbps程度あれば十分快適に使えますが、オフィスで大容量ファイルをダウンロードしたり、大人数でのWeb会議を行ったりする場合、高速で快適な通信速度を保つためには1Gbps程度必要になります。
ビジネスで求められる通信速度は事業規模や業務内容によっても異なりますが、一定以上の通信品質は業務をスムーズに行うためには不可欠なものであるため、いま一度確認してみましょう。
Wi-Fiの速度が遅いと感じた場合はこの記事を参考にその原因を確かめて、適切に対処してみてください。