GPUサーバーとは?用途やメリット、3種類の提供形態とその選び方を解説

AIと同時に注目が集まっているGPU。それが搭載されたサーバーを「GPUサーバー」といいますが、複数人でGPUリソースを共有できるなどのメリットがあります。
今回は、GPUサーバーのメリットや用途、そして市場における提供形態と選び方まで解説します。
GPUサーバーについて知りたい方、GPUサーバーの導入にお困りの方はぜひ参考にしてください。
【そもそも】GPUとは
GPUとは「Graphics Processing Unit」の略で、画像処理装置を意味します。文字通り画像や映像の演算処理を得意とし、コンピューターゲームや3DCGにおけるリアルタイム画像処理に活用されてきました。現代の高品質な画像・映像は大量のデータを抱えていますが、そこから転じて、同じく膨大なデータを扱うAI開発や深層学習などにもGPUは利用されるようになり(GPGPU)、その需要は急速に拡大しています。
【ちなみに】GPGPUとは
GPGPUとは「General-Purpose computing on Graphics Processing Units」の略で、GPUを画像以外の演算処理に利用する技術です。GPUはGPGPUの発展によってAI開発などに積極的に活用されるようになり、「GPU=AI」というイメージが定着し始めました。
GPUとCPUの違い
GPU以上に広く知られている処理装置として、CPU(Central Processing Unit)というものがあります。CPUとは中央処理装置を意味し、汎用的な演算処理を行うことができます。
GPUとCPUは同じ処理装置ですが、目的や用途が異なります。
CPUはしばしばコンピューターの“頭脳”に例えられ、コンピューター内のあらゆる演算を実行・制御し、汎用的かつ逐次的な処理を得意とします。
一方のGPUは並列的な処理を得意とするため、膨大なデータを単純かつ同時に演算する能力に長けています。
GPUはCPUに比べて圧倒的スピードで演算処理を行うことができるため、CPUより上位のものとして語られがちです。しかし、どちらが優れているというよりは、それぞれが得意な領域を処理するという協力関係にあります。
以下は両者の簡単な比較です。
GPU | CPU | |
---|---|---|
得意な処理 | 並列処理 | 逐次処理 |
価格 | 高価 | 安価 |
消費電力 | 高い | 低い |
GPUサーバーとは
GPUサーバーとは、GPU(Graphics Processing Unit)が搭載されたサーバーのことです。従来のCPUを中心としたサーバーでは困難だった、大量データの並行処理が可能になります。GPUサーバーの主な用途やメリットを解説します。
【ちなみに】GPUとGPUサーバーの違い
便宜的に同じものとして扱われることもありますが、厳密にはGPUはあくまで「処理装置の一種」であり、それ単体では機能しません。一方、GPUサーバーは「GPUを搭載したサーバー」でインフラストラクチャ全体を指し、CPUやディスク、メモリなどさまざまなパーツで構成されています。
GPU搭載のPC※やワークステーションももちろん存在しますが、例えば企業でのGPU利用においては、各従業員にそういったデバイスを配布するのは適切でないケースもあります。GPUサーバーであれば従来のサーバーと同じく組織で一元的にリソースを共有できるため、用途によっては非常に効率的にGPUを運用管理できます。
※グラフィックボード(グラボ)搭載PCと呼称されることが多いです。
GPUサーバーのメリット
GPUそのものは圧倒的な並列処理能力によって大量のデータを同時に処理できることがメリットですが、それをサーバーとして運用することにはまた別のメリットがあります。
ここではGPUサーバーの主要なメリットを解説します。
- リソースの共有
- 運用管理の効率化
- 拡張性
リソースの共有
従来のサーバー同様、組織でリソースを共有できるのがGPUサーバーのメリットです。適切な環境を構築することで、デバイスに依存することなく、各ユーザーが必要なときに必要なだけのリソースを利用することができます。サービスのインフラとしてGPUサーバーを用いる場合、共有先には外部のユーザーも含まれます。
運用管理の効率化
GPUの運用管理においては、ソフトウェアアップデートやセキュリティ対策、リソース監視、電力供給、温度管理など、さまざまなケアが必要です。GPUをPCやワークステーションで分散配置する場合と比較して、GPUサーバーは運用管理を一元化・効率化することができます。
拡張性
PCやワークステーションに比べ、GPUを受け入れるキャパシティが大きいのもGPUサーバーのメリットです。デバイスやユーザーごとではなく、組織全体の利用状況などに応じてより柔軟にGPUを増設・撤廃できます。応急的にデバイスごとのリソース拡張に対応するといったことも減らせるため、過剰な投資を避けられ、コストパフォーマンスを最大化できます。
GPUサーバーの主な用途
GPUサーバーは、企業や研究機関を中心に幅広い用途で活用されています。具体的な例を3つ紹介します。
- AI開発
- 3Dグラフィックス制作
- 製造・建築・空間デザイン
AI開発
昨今では「GPUといえばAI」という印象が強くなりつつあります。AIの開発・運用では大量のデータを並列的に処理できるGPUが必要があり、事業として取り組む場合はPCというよりサーバーをインフラとするのが一般的です。
ChatGPT や Microsoft Copilot、Gemini などに代表される生成AIが例として挙げられますが、いち機能あるいは裏側の処理にAIを活用しているアプリケーション・Webサービスも続々と登場しています。これらは協力会社のAI開発環境を用いて実装されているケースもありますが、自社開発の場合はGPUサーバーが用いられます。
3Dグラフィックス制作
映像制作などにおける3DグラフィックスのレンダリングにもGPUは活用されます。個人レベルでの制作であればグラフィックボード搭載PCやワークステーションで十分ですが、チームで制作する場合は効率的なGPUリソースの活用のため、GPUサーバーが導入されることもあります。
製造・建築・空間デザイン
3Dグラフィックス制作と少し似ていますが、製造・建築・空間デザインにおける設計開発でもGPUサーバーは活用されています。3D CADを使用するような高度な設計開発にはグラフィックボード搭載PCを使用することが一般的ですが、それを複数人で同時作業する現場ではGPUサーバーを活用することがあります。PCのスペックに依存せず、効率的でリアルタイム性の高い作業を実現します。
GPUサーバー市場における3種類の提供形態
GPUサーバーを導入・利用したい場合、現在の市場では主に3種類の提供形態から選択することになります。
- 購入
- レンタル
- クラウド
1.購入
文字通り「GPU搭載の物理サーバーを購入する」提供形態です。メーカーから直接、またはベンダーから提供を受ける形になりますが、実際にはさらに2つの系統があります※。
- オールインワン系
- カスタム系
※あくまでUSEN ICT Solutions独自の見解です。
オールインワン系
当たり前ですが、GPUサーバーはGPUのみで稼働するわけではありません。PCと同じように、CPUやディスク、メモリ、電源、冷却装置など、さまざまなパーツが必要になります。
これらをメーカーが最適な組み合わせでパッケージングして提供してくれる、“オールインワン”製品があります。ハイエンドなスペックのものが多く、原則同一メーカーのパーツで構成されるため、サポートを受けやすいといったメリットもあります。
一方、比較的高価な傾向にあり、カスタムの幅も限定されるためオーバースペックになってしまうケースもあります。
カスタム系
GPUに限らず、コンピューターのパーツはさまざまなメーカーによって製造されています。「自作PC」という言葉もあるように、複数のメーカーのパーツを組み合わせて自分好みのマシンをつくる人もいますが、GPUサーバーでももちろん同じようなことができます。
この特性を活かし、お客様の希望・用途に合わせて各メーカーから最適なパーツを“カスタム”し、疑似的にオールインワンのような形で提供するベンダーも存在します。
GPUは決して安価なものではないため、コストパフォーマンスを最大化するためには適切なサイジングが必要になります。重要なパーツにしっかりと投資し、用途にあまり影響しないパーツは安価なもので済ませる、といったことが可能な点がカスタム系の大きなメリットです。
自作PCであれば自己責任で動作保証がないというデメリットがありますが、GPUサーバーの場合はしっかりとしたベンダーから購入すれば動作保証やサポートが付帯していることがほとんどです。
オールインワン系とカスタム系、どちらも設置場所や電源、ネットワークの整備は別途必要になります。一般的にはデータセンターに設置するのが望ましいです。
2.レンタル
GPUサーバーを購入する場合、初期投資に大きなコストがかかります。短期的なプロジェクトや初期段階のサービスの基盤として使うのであれば、尚更リスクの高い判断になるでしょう。
また、GPU周辺の技術は日進月歩で進化しているため、せっかく購入しても減価償却の間により良いものが発売されてしまうという懸念もあります。
そういったニーズに応えるのが、GPUサーバーのレンタルです。これは「GPUサーバーそのものを物理的に借りる」提供形態であり、従来のレンタルサーバーのように事業者のリソースを間借りするようなものではありません。
初期投資を抑えられるほか、増設や撤去が購入に比べて容易というメリットがあります。また、故障時などの交換対応が充実しているサービスもあり、運用コストも軽減できます。
一方、長期的にみると購入より費用がかかる傾向にあります。
3.クラウド
ここ数年でクラウドサービスは当たり前のものになりましたが、GPUサーバーにもクラウド型の提供形態が存在します。これは「ベンダーが抱えるデータセンターに設置されたGPUサーバーを、インターネット経由で利用する」形態で、国内外でさまざまなサービスが台頭しています。
インターネット経由で事業者のリソースを利用するという意味では、前述の「レンタル」よりもこちらの方が従来のレンタルサーバーに近いと言えます。
物理的なメンテナンスから解放されるほか、利用したいときに利用したい分だけのリソースを立ち上げられるサービスが多く、柔軟性の高さも魅力のひとつです。
一方リソース×時間の従量課金制が採用されがちで、長期的には割高になる可能性も高いため、プロジェクトにおける検証やテストに利用されるケースが多いです。
GPUサーバーの選び方
GPUサーバーを導入する場合、基本的には前述の「購入」「レンタル」「クラウド」のいずれかから選ぶことになります。
ここでは、GPUサーバーの選び方や注意すべき点を解説します。
- 用途に合った提供形態か
- 最適なサイジングか
- サーバー設置環境との親和性は高いか
用途に合った提供形態か
何よりも重要視すべきは、GPUサーバーの用途です。短期的な検証のために「購入」してしまうのはリスクが高いですし、逆に長期的な有償提供が見込まれているサービスの基盤に「クラウド」を採用するのは現状好ましくないでしょう。
主には利用期間が判断基準となりますが、スケールの可能性や弾力性などからも判断することができます。例えば「平時はほとんどリソースを使わないが、月に一度爆発的な使用がある」といったプロジェクトには、柔軟性の高い「クラウド」の方が向いているかもしれません。
最適なサイジングか
GPUサーバーのコストパフォーマンスを最大化したい、あるいは過剰な投資を避けたい場合、最適なサイジングが為されているか、つまりサーバーを構成するパーツやスペックがそれぞれ適切かをしっかりと確認しましょう。
特にオールインワン系でGPUサーバーを購入する場合には注意が必要で、用途に対して部分的にスペック過剰になってしまうケースもあります。
サーバー設置環境との親和性は高いか
どれだけ用途にマッチしていたとしても、そのGPUサーバーを設置できる環境が整っていなければ運用することはできません。設置面積や供給電力、冷却装置、ネットワークなどが十分かをあらかじめ確認しておきましょう。
一般的にはデータセンターに設置されることが多いですが、データセンターのなかでもGPUサーバー設置に向き不向きがあるため注意してください。
近年、AI開発などの分野においてGPUへの注目が急速に高まっています。その性能を組織で最大化するためには、GPUサーバーというインフラストラクチャが必要です。
GPUサーバーのメリットやPC・ワークステーションで分散配置する場合との違い、また市場における提供形態や選び方をしっかりと理解し、最適な導入を目指しましょう。
USEN ICT Solutionsでは、GPUサーバーのサイジング支援やデータセンターのハウジングを提供しています。GPUサーバーについてお困りの方は以下からお問い合わせください。