スマートフォンやタブレット端末が普及する以前の私たちは、パソコンで使いたい機能はソフトウェアのライセンスを購入し、インストールする事で利用できるようになっていました。ソフトウェアとは、WindowsやMacなどのOSやExcelやWordなどのアプリケーションソフトウェア(以下、アプリ)のことです。
現代では、学生から大人まで多くの人が自分用のスマートフォンを持っていると思いますので、インターネット経由でOSもアップデートしていますし、インターネット経由でアプリも購入しますよね。このインターネット経由で利用できるものの総称がクラウドサービスです。
よって、わざわざ説明をしなくとも、今の年代の人々はクラウドサービスは非常に身近な存在かと思います。
本日は、クラウドサービスをIaaS、SaaS、PaaSのように、もう少し細かい分類でご紹介していきたいと思います。

そもそもクラウドって何?種類の分類はどんな風にされている?

インターネット経由で利用できるサービスがクラウドサービスであると申し上げました。そもそも何故「雲」を意味するクラウドと言うのか?は諸説あるようで、「技術者がネットワーク図を書く際にインターネットを雲で表現することが多かったから」「ユーザから見た時にサービスの物理的な提供場所を意識せず雲(インターネット)の向こうのサービスを利用するイメージだから」などが起源では、と言われているそうです。

クラウドサービスは、これまでユーザが自身のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由でサービスとして提供されるものです。ユーザ側は最低限の環境(パーソナルコンピュータや携帯情報端末などのクライアント、その上で動くWebブラウザ、インターネット接続環境など)を用意することで、どの端末からでも、様々なサービスを利用することができます。

クラウドサービスは提供される領域の違いによって細分化されます。ソフトウェアまで提供しているクラウドサービスをSaaS、プラットフォームまで提供しているクラウドサービスをPaaS、インフラまでを提供しているサービスをIaaSと呼びます。

IaaSとは

IaaSとは「Infrastructure as a Service」の略語で「イアース」と読みます。IaaSはシステム開発やソフトウェアの稼働に必要な仮想サーバや共有ディスク、ネットワークなどのITインフラをインターネット上のサービスとして提供するものです。

IaaSのメリットやデメリットについて

IaaSはサーバやストレージといったハードウェアリソースのみを提供するサービスですので、使用するOSやプログラミング言語などについてはユーザ側で自由に決めることができます。好みの開発環境を一から構築できるため、IaaSに比べて制約の多いPaaSやSaaSでは達成が難しい目的にも対応できるのがメリットです。
また、それまでオンプレミスでサーバ運用をしていた企業がクラウド利用に移行するとなれば、税務上の負担が軽減することもあります。自社でサーバやデータベースを構築し運用する場合、サーバルームのような物理スペースが必要です。
空調や電源などの設備投資もしなければならないので、オンプレミスの為に用意した設備は初期構築段階で償却資産として固定資産税の対象になる可能性が高いです。

デメリットについては、IaaSの自由度の高さを言い換えているだけですが、OSやデータベースなどのミドルウェアなどはすべて自分で選択する必要があるということでしょうか。更新やセキュリティ対策といったサーバやOSの管理も自分で行う必要がある為、クラウドサービスの中でも、構築や運用に関して専門知識が必要なサービスといえるでしょう。

代表的なIaaSサービスとは?

Amazon社(AWS)や、Microsoft社(Azure IaaS)は後述のPaaSとしてのサービス提供の他、サーバやストレージ、ネットワーク、CPU などインフラの機能を持つIaaSとしてのサービス提供も行っています。
IDCFクラウドやビットアイルクラウド、ニフクラ...と挙げていくとお気づきの様に、従来データセンタ事業を行っていた企業はIaaS事業に参入している傾向と言えます。

IaaSが何か知っていますか?

そもそもIaaSというものについて現時点で知っている人は、どれくらいいるのでしょうか。全国の男女100人を対象にアンケート調査を実施しました。

【質問】
IaaSがどのようなものかを知っていますか?

【回答結果】
知っている:22
知らない:78

調査地域:全国
調査対象:【年齢】20 - 29 30 - 39 40 - 49 50 - 59 60 【職業】パート・アルバイト 個人事業主 公務員 正社員 派遣社員 経営者
調査期間:2017年07月11日~2017年07月18日
有効回答数:100サンプル

調査の結果、単語そのものを知らないという人もかなりいることがわかりました。

・名前も聞いた事がないので分かりません。(30代/女性/正社員)

・クラウドサービスの一つとは理解していますが、実際に利用したことがないため、よく理解していません。(40代/男性/個人事業主・フリーランス)

一方で正確な知識を持っている人も回答者全体の2割にのぼっています。

・クラウドコンピューティングの一種。(40代/男性/正社員)

・クラウドサービスの一種。仮想化技術を利用し、ハードウェアリソースなどのITインフラをインターネットなどで経由して、オンデマンドで提供するためのサービスのことです。(20代/男性/パート・アルバイト)

・情報システムの稼動に必要な機材や回線などの基盤(インフラ)を、インターネット上のサービスとして遠隔から利用できるようにしたもの(50代/男性/正社員)

詳細な解説を挙げてくれた人がいることも考えると、職種などによってはIaaSをすでに積極活用しているケースもあるといえそうです。

今回の調査ではIaaSの認知度はまだ一般的とはいえないものの、一部の人にとってはIaaS関連の知識がすでに常識として定着していることもわかりました。IaaSをはじめとするクラウドサービスの知識については、ITに関する経験などによってかなりの個人差があるといえそうです。

導入するなら知っておくべき!IaaSのセキュリティ

IaaSを利用する上でのセキュリティ対策はユーザ自身で講じる必要があります。インフラ(設備)が自社またはデータセンタからクラウド環境へシフトしたというだけですので、運用面ではオンプレのそれと同じように捉えるべきでしょう。

PaaSとは

PaaSとは、「Platform as a Service」の略語で「パース」と読みます。PaaSはインターネット経由で、仮想化されたアプリケーションサーバやデータベースなどアプリケーション実行用のプラットフォーム機能の提供を行うサービスのことです。

PaaSのメリットやデメリットについて

IaaSと同様に自社でアプリケーションを開発するとなった際に必要なインフラ設備やサーバ等のハードウェアの構築、バックアップ体制の用意など初期投資を安価に済ませる事が出来る他、運用後の障害対応やメンテナンス等の運用コストも軽減します。
またPaaSの場合はミドルウェア部分もベンダー担当領域となりますので、アプリ開発の部分に集中して社内リソースを割けるというのが最大のメリットではないでしょうか。

PaaSはミドルウェアまでクラウド上で提供されますので、デメリットとしてはIaaSよりも自由度に制限がかかるという点になるでしょう。オンプレミスからアウトソースに踏み切る場合は、既存システムとの互換性やエンジニアがこれまで使っていたOSやミドルウェアと同じもので移行をしたいと思うのが自然ですので、クラウドに移行する前に、現在の(もしくは希望の)サーバ仕様の再現が可能であるか確認をすべきでしょう。

代表的なPaaSサービスとは?

Microsoft社のAzureやGoogle社のGoogle Cloud(GCP)、そしてAmazon社のAWSは世界3大クラウドと呼ばれ、不動の三強となっているのではないでしょうか。また、専門知識がなくても自由にアプリ制作を行えるプラットフォームとして有名なのがKintoneでしょう。Salesforce Platformも容易な操作性が魅力です。その他、NEC Cloud PaaSやAppSQUAREなど各社様々なPaaSサービスを提供しています。ベンダーのセキュリティレベルや操作性、既存システムとの互換性等、サービスの機能だけじゃなくそれぞれの特性を見比べて検討してください。

SaaSとは

SaaSは「Software as a Service」の略語で「サースまたはサーズ」と読みます。 皆さん自身でもスマホやタブレット端末で使われているかと思いますが、「スマホアプリ」と呼んでいるものもSaaSサービスです。ビジネスシーンにおいてはPCで使うことがメインとなるでしょうが、メールやスケジュール管理といった既に出来上がったソフトウェア機能をインターネット経由で提供するタイプのクラウドサービスのことです。
メール、グループウェア、顧客管理、財務会計のような既に完成したアプリケーションソフトウェア機能を使うだけですから、システム開発などに携わっていない人でも使用機会が多いでしょう。
こういったサービスは昔はASPサービス(Application Service Provider)などと呼ばれていましたよね。

SaaSのメリットやデメリットについて

SaaSを使うメリットは、専門スキルやノウハウを要する構築や運用を省いて、使いたい機能が搭載されているサービスを導入し、必要な設定だけ行えばすぐに使えるという手軽さではないでしょうか。
インターネットにさえつながっていればPCやスマホなどの端末を選ばずにクラウド上のデータにアクセスして業務を行えることから、日本で急速にテレワーク対応を浸透させた最大の立役者がSaaSだと言っても過言ではありません。
一方デメリットとしては、事業者側のシステム障害やネットワークに障害が生じた場合に利用が不可能になってしまうことが挙げられます。

代表的なSaaSサービスとは?

Google WorkspaceやLINE WORKS、サイボウズOfficeなどのグループウェアは有料版を企業でも使用しているケースが多くありますが、個人向けに無料版の展開もあるのでイメージしやすいのではないでしょうか。それ以外にもマネーフォワードや弥生会計のような会計システム、freee人事労務のような労務管理システム等、企業になくてはならないツールがSaaSサービスとして多く出回っています。

IaaS、SaaS、PaaSそれぞれの違いとは

専門用語で説明する前に例え話にお付き合いください。(逆にわかりにくくなっていたら申し訳ないのですが...)

今、あなたの隣にケーキを食べたがっている友達がいると仮定します。
まず用意するべきなのは、食事をする為のテーブルと椅子ですが、購入するとなると高いですし、購入するまでの選定も発注してから届くまでの納期も日数がかかります。そこであなたは友達の為に予めテーブルと椅子を用意してあげることにしました。

用意してあげたのはここまでなので、友達がこの上にどんな素材のどのくらいの大きさのお皿を置くかというところから自由に決められます。大きいホールケーキにしようか、それとも小さいマカロンを置こうかなど、自由自在なのです。その代わり、お皿を作る手間は友達が負担しなければいけません。これがIaaSです。


さて、友達からお皿を作るスキルがないと言われてしまい、あなたはケーキを食べるのに必要なお皿やフォーク等まで用意してあげることにしました。

これなら友達に必要なのは、ケーキを作るスキルだけです。お皿のサイズは決まっているので置けるケーキの大きさには制限がありますが、ショートケーキだろうがミルフィーユだろうがケーキの種類については充分な選択権があります。これがPaaSです。

ここまでお膳立てしましたが、友達から「自分はケーキを作れない。選り好みはしないからもう出来上がったケーキを食べるだけにしたい」とねだられました。そこであなたはあなたが得意なケーキを用意して友達に提供しました。友達はケーキの種類や大きさを選択する自由を失った代わりに、手軽にケーキにありつけました。与えられたケーキをどこから食べるかは勿論自由です。これがSaaSです。

アプリ開発を行うにあたり必要な構成要素は、ネットワーク等のインフラ設備、物理的なサーバやネットワーク機器等のハードウェア、システムを動かす頭脳であるオペレーションシステム、アプリケーションをより高度に細かく動作させる為に必要なミドルウェア、そしてアプリケーション(ユーザのニーズに合わせて特定の機能を搭載した専用プログラム)の5つです。
この5つのうちどこまでがクラウドサービスとして提供されるかによって、IaaS、PaaS、SaaSと呼び名が変化します。

覚えておくべき?IaaSやPaaSに関係する情報開示認定制度

IaaSやPaaSの導入時に参考になるのが情報開示認定制度です。「IaaS・PaaSの安全・信頼性に係る情報開示認定制度」は、2012年8月に運用が開始されました。

情報開示認定制度は、IaaS・PaaSサービスを利用したい企業や団体が必要とする信頼性のある情報を適切に開示し、かつ一定の要件を満たしているIaaSやPaaSサービスを認定する制度です。

情報開示認定制度を利用することで、ユーザ側ではサービス提供事業者の比較・評価・選択が容易になります。またサービス提供事業者側にも認定を受けることでサービスへの信頼が高まり、ユーザ獲得の機会を得られるチャンスが出てきます。ユーザ、サービス事業者側双方にメリットのある制度といえるでしょう。

まとめ

クラウドで提供されるものとして代表的なIaaS、PaaS、SaaSについてご理解頂けましたでしょうか。最近では、FWaaSとかIDaaS、NWaaS、DaaSのように、「〇〇as a service」シリーズが更に増えてきました。インターネットさえあれば何でも出来る世の中。クラウド移行が主流になっています。

しかし便利な一方でインターネットが繋がらない環境下では何も出来なくなるリスクもまだまだついて回る課題です。インターネットが途切れたとしても決して業務は止められないという業種もありますので、自社に適したクラウドサービスは何なのか流行に流されずに選定したいところですね。

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