固定IPアドレスとは?取得方法や活用シーンを徹底解説
固定IPアドレスを利用すると、企業にとって様々なメリットがありますが、取得方法や活用の仕方はご存知でしょうか。
そこで今回は、固定IPアドレスの必要性と取得方法について解説します。
企業がビジネスでインターネットを利用する場合には固定IPアドレスを取得しておいた方が便利ですが、サービスやプランによっては費用が高額になったり、自社の規模に合わなかったりするため注意が必要です。
動的IPアドレスとの違いや固定IPアドレスの活用事例についてもご紹介しますので、必要性を感じた場合は自社のニーズに合った適切な方法で取得していただけたらと思います。
ネットワーク接続に必要なIPアドレス
インターネットを使うにあたって、「IPアドレス」という言葉を聞いたことはあるかと思います。IPアドレスとは、ネットワークに接続するスマートフォンやPCなどの機器にそれぞれ割り振られる識別番号です。
3桁の数字の4つの組み合わせで構成されており、IPアドレスによってネットワークに接続した機器を判別する、言わばインターネットで通信するための「住所」のような存在となっています。
ネットワークに接続されている特定の端末とデータをやり取りするためには、必ずIPアドレスが必要です。
IPアドレスの種類
IPアドレスは用途別に大きく以下の2種類に分けられます。
- グローバルIPアドレス
- プライベートIPアドレス
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
グローバルIPアドレス
グローバルIPアドレスは、インターネットに接続された機器に割り振られるIPアドレスで、必要な場合は管理団体に対して申請して割り当てを受けなければいけません。
それぞれが世界にひとつしかない一意のアドレスであるため、重複しないよう適切に管理する組織があります。
全世界的にはICANNという非営利団体がIPアドレスとドメインの管理を行っており、その下に5つの地域インターネットレジストリ(RIR)があります。
- ARIN・・・北米地域を管理
- RIPE NCC・・・欧州地域を管理
- APNIC・・・アジア・太平洋地域を管理
- LACNIC・・・中南米地域を管理
- AfriNIC・・・アフリカ地域を管理
日本国内のIPアドレスは、APNICの下に存在するJPNICという団体が担当しています。
プライベートIPアドレス
プライベートIPアドレスは、会社や家庭などの組織内に割り振られるIPアドレスで、ローカルIPアドレスとも呼ばれます。
インターネットへの接続が必要ではない組織内部のネットワークアドレスとして自由に利用できるものです。そのため、グローバルIPアドレスは世界に1つという認識ですが、プライベートIPアドレスについては、世界中で同じIPアドレスが重複しています。
固定IPアドレスとは
固定IPアドレスは、一度割り振られた識別番号が、故意に変更しない限り変わらないIPアドレスです。専用のIPアドレスとなっているため、いつ・何度アクセスしても常に同一のIPアドレスを使用できます。
IPアドレスを固定していないと、ルーターの再起動・再設定などで変わってしまい、外部から社内ネットワークにアクセスできなくなるリスクがあるため、Webサイトを公開したり、社外からファイルサーバーへアクセスしたりする際には固定IPアドレスが必要です。
動的IPアドレスとの違い
固定IPアドレスと対局に位置するのが「動的IPアドレス」です。常に同一のIPアドレスを使用できる固定IPアドレスに対し、動的IPアドレスは変動します。
IPアドレスが変わるタイミングはプロバイダーに依存しますが、ルーターの再起動時や特定の期間が経過すると、新しいIPアドレスが割り振られます。
家庭向けのプロバイダーを契約すると動的IPアドレスが割り振られるため、固定IPアドレスを取得したい場合は法人向けサービスか別途オプションの契約が必要になります。
固定IPアドレスの必要性とメリット
一般的に、法人や個人事業主では、動的IPアドレスよりも固定IPアドレスを利用することが多いです。ここでは、企業が固定IPアドレスを設定する必要性やメリットについてご紹介します。
外部からアクセスできる
固定IPアドレスがあれば、社外から社内のサーバーに安全にアクセスする仕組みをつくることができます。
テレワークやリモートワークが進んでいる企業や、外出先から社内のファイルサーバーにアクセスする機会の多い企業にとっては大きなメリットであると言えます。
セキュリティの向上が期待できる
社員や委託先などが利用する端末に固定IPアドレスを設定すれば、設定されたIPアドレス以外の機器からのクラウドサービスへのアクセスを遮断できるため、セキュリティの強化に繋がります。
指定したIPアドレス以外のアクセスを禁止すれば、情報漏えいなどの事故を予防できるため、セキュリティを高める目的で固定IPアドレスを取得する企業も多いです。
ただし、必ずしも安全とは言えないため、UTMの導入や社内ルールの設定など、セキュリティ対策を万全にしておく必要もあるでしょう。
固定IPアドレスを利用するデメリット
固定IPアドレスの取得を検討している企業の方は、デメリットについても理解しておきましょう。
考えられるデメリットは以下のとおりです。
- コストがかかる
- セキュリティ面の懸念あり
- 変更に時間や手間がかかる
正しい設定・適切な運用ができなければ、セキュリティリスクが高まり、サイバー攻撃などの被害に遭う可能性があります。ファイアウォールやUTMを導入するなど、セキュリティ対策を万全にしておかなければいけません。
固定IPアドレスの相場費用
接続のたびに自動で設定される動的IPアドレスと比較して、固定IPアドレスの料金は割高に設定されています。
その料金はプロバイダーやプランによって異なりますが、相場としては月額1,000円から3,000円程度です。ただし、プロバイダーによっては数万円かかる場合もあるため、注意して契約しなければいけません。
法人向けサービスの場合、標準で付帯していることもあり、複数の固定IPアドレスを取得できるプランもあります。
固定IPアドレスの取得方法
固定IPアドレスを取得するメリットを理解していただけたかと思いますが、実際に固定IPアドレスを取得したい場合、どのような方法があるのでしょうか。
固定IPアドレスの取得方法は、以下の3つがあります。
- オプションを契約する方法
- 法人向けのインターネット回線サービスを契約する方法
- 固定IPアドレスに対応しているSIMを契約する方法
それぞれ詳しく見ていきましょう。
オプションを契約する方法
固定IPアドレスを取得するために、契約しているプロバイダーにオプションを契約する方法があります。プロバイダーとインターネット接続サービスを申込み、IPアドレス割り当てサービスを利用します。
全てのプロバイダーが固定IPアドレスを発行しているわけではないので、注意しましょう。固定IP割り当てサービスを提供する主なプロバイダーは以下のとおりです。
- インターリンク
- GMOとくとくBB
- ASAHIネット
- BIGLOBE
- OCN
- Yahoo BB!
法人向けのインターネット回線サービスを契約する方法
法人向けのインターネット回線サービスであれば、固定IPアドレスが標準装備されていることが多いです。オプションなどのわずらわしい手続きも必要ないため、固定IPアドレスが欲しいけど複雑な契約はしたくない、という方におすすめです。
一方で、法人向けを謳っていても固定IPアドレスが標準装備されていないサービスもあるため、事前に確認する必要があります。
固定IPアドレスに対応しているSIMを契約する方法
固定IPアドレスが付与されたSIMカードを契約する方法もあります。
固定IPアドレスに対応するSIMの設定は、利用する端末にSIMカードを挿入するだけで済み、月額500円~1,000円程度で固定IPアドレスを利用できます。ただし、これはデバイスごとにSIMカードを用意することになります。
サービスやプランによって料金や契約条件が異なり、月額料金が割高になったり初期費用がかかったりする場合もあるため、自社にとって適切なものを選ぶことが重要です。
固定IPアドレスの活用事例
企業における固定IPアドレスの活用シーンを具体的にご紹介します。
動的IPアドレスは特に意識することなく利用できるため便利なようにも感じますが、企業が固定IPアドレスを取得すると活用の幅が広がるため、動的IPアドレスで十分だと思っている方もぜひご確認ください。
Webサイトを自社サーバーで運営する
固定IPアドレスを利用すれば、自社でサーバーを構築し、独自のドメイン名でWebサイトを公開することができます。(ただし、ドメインは別途取得する必要があります。)
レンタルサーバーサービスなどで簡単にWebサイトを公開するという方法もありますが、独自のドメインを設定できないケースもあります。自社ドメインがしっかり使われているWebサイトなら、顧客からの信頼度もアップするでしょう。
リモートVPN活用で働き方の自由度を上げる
固定IPアドレスを利用すれば、リモートVPNを使用でき、社外から社内ネットワークへのアクセスが容易になります。
自宅やカフェなどに居ながら社内サーバーのファイルやデータを扱うことができるため、テレワークやリモートワークといった個人の都合に配慮した働き方が可能になります。
働き方の多様化を実現できれば、人手不足が問題になっている中小企業においても人材を確保できる機会が増えるでしょう。
固定IPアドレスを取得して活用しよう
セキュリティの強化や働き方の多様化という観点から、企業にとって固定IPアドレスの活用は有効になります。
固定IPアドレスを取得する場合、以下の3つの取得方法を押さえておきましょう。
- オプションを契約する方法
- 法人向けのインターネット回線サービスを契約する方法
- 固定IPアドレスに対応しているSIMを契約する方法
固定IPアドレスを利用するメリット・デメリットを理解したうえで導入を検討している企業は、今回ご紹介したIPアドレスを固定化する必要性や取得方法への理解を深め、活用していただけたら幸いです。