正しいデータセンターの選び方|データセンターの品質を表す「Tier」とは?
データセンターの利用を検討する際、何を基準に選べばいいのか迷うご担当者様も多いことでしょう。もちろん「会社から近い」「湾岸エリアではない」「マルチキャリア対応」などの条件はすぐに思い浮かびますが、それだけではありません。
この記事では、上記に加え重要となるデータセンターを評価するための基準「Tier」について分かりやすく説明していきます。
Tier(ティア)とは?
Tier = 格付け評価基準のこと
Tierとは、「段」「列」「階層」などの意味を持ち、データセンター分野においては、データセンターの品質や付帯設備の格付けを示します。中でもアメリカの民間団体であるUptime Instituteによって定義されたものが最も有名です。「Tier Ⅰ」~「Tier Ⅳ」まであり、数字が大きいほど、信頼性が高いことを意味します。
しかし、Uptime Instituteの定めたTierはグローバルな実情に合わせて作成されたファシリティ基準であり、日本の実情が考慮されていないという問題を持っています。そこで、日本の非営利団体であるJDCC(日本データセンター協会)が日本の実情に合わせて「データセンターファシリティスタンダード」という基準を定義しています。これは、Uptime InstituteのTierで求められる基準の中で、日本では過剰と判断される部分を修正し、日本独自の要素を追加したものです。「建物の堅牢性」「セキュリティ高度」「災害対策」などの評価観点を6つの「基準項目」と8つの「推奨項目」からなる全14項目に分けて規定しています。
各ティアレベルが想定している、データセンターのサービスレベル
ティア | サービスレベル |
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ティア 1 |
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ティア 2 |
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ティア 3 |
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ティア 4 |
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JDCC「データセンターファシリティスタンダードの概要」より
これを見ると、「ほぼTier4のデータセンターなら稼働信頼性が99.99%以上だから万全!」と考えてしまうかもしれません。しかし、それは誤りです。なぜなら、「ほぼTeir4」というデータセンターの中にも、項目ごとに見ると低い品質が含まれていることがあるからです。
次の段落から詳しく解説していきましょう。
「ほぼTier4」などと謳っているデータセンターを選ぶときは「見えない低評価」に注目しよう!
データセンターにおいては「ほぼTier4」「Tier3~Tier4相当」と表現することが多くあります。これを見て情報システム担当者は「Tier3」「Tier4」などの「Tier」を意識してデータセンターの選定材料の1つとしています。
しかし、そこには「致命的な欠点」が隠れているケースがあります。なぜならデータセンターの品質は、本来は一言で表せるものではなく、14項目のひとつずつに「Tier」基準で評価されるのです。つまり、「建物」の品質は「Tier4」だが、「電気設備」の項目は「Tier1」というようなことが起こり得ます。
したがって、「ほぼ」や「相当」という表現に安心しきってしまい、一部の項目に存在する低品質な箇所を見落としてしまう可能性があります。
実際にある「ほぼTier4(最高評価)」と謳っているデータセンターの例
- 施設要件は満たしているが、データセンターとは無縁の一般企業が入居しているビルである
- 駅への近道として一般人の往来が多くあり、潜在的なリスクがある
- 一般の飲食店が同じテナントに入っていて火災発生の可能性がある
上記のような場合、該当項目のTier評価は「Tier1」または「Tire2」となる場合があり、それでも全体をひとまとめで表現する場合においては「ほぼTire4」などと記載されている場合があるのです。
そのため、データセンターを選定する際にはすべての項目(特に品質の低い項目)に注意を払って選定していく必要があります。
ファシリティスタンダードの中でも重視したい3項目
データセンターを選定する際に現地を訪れると、「見えないマイナス評価」にすぐに気づけますが、候補を絞るという意味で、まずは以下の項目を確認することをおすすめします。
- 建物用途:セキュリティの観点から重要
- 地震災害のリスク:データ保全の観点から重要
- 非常用電源設備・UPSの冗長性:可用性の観点から重要
Tierレベルを意識したい項目①:建物用途
建物ごとに様々な用途がありますが、データセンターとして利用する場合には、「セキュリティ観点」「防災観点」などを現実的に意識するべきです。
以下に建物の用途により背負うリスク例をご紹介します。
データセンターとは関係のない企業も入居する複数用途ビル(Tier1/Tier2)
「IXとの接続性」を重んじ、データセンターとは関係のない企業が入居する複数用途ビルの一角がデータセンターとなっていることが都心などではよくあります。その場合の多くのデータセンターは、IDカードの認証によって関係者しか該当フロアにエレベーターが停止しないというような対策を講じています。しかし、これは一般のオフィスでも取り入れられているものなので特別セキュリティに力を入れているわけではありません。
また、時折見かける例として、データセンターと一部同レベルのセキュリティ(個人情報管理等)を求めるコールセンターが同居しているような場合もありますが、これは複数の無関係者が同ビル内を往来することとなり、あまり好ましくはありません。
データセンターに関係する企業が建物内に存在するビル(Tier3)
日本企業のデータセンター事業者の形態として、「運用(オペレーション)業務を委託する」というものがあります。その場合、データセンターの一角に委託先運用事業者が常駐することになります。この状況は、用途自体はデータセンターに適しているのでセキュリティも一定水準であると考えられます。
しかし、データセンターではない一般の会社が入っているためTier4ほどではありません。
データセンターとしての専用のビル(Tier4)
最もセキュリティレベルの高いTierです。自社で全ての設備を管理し運用する体制となるため、データセンター事業に大きな費用をかけている企業こそが成し得ることができます。
もちろん、全国にそのようなデータセンターは複数存在しています。
Tierレベルを意識したい項目②:地震災害のリスク
選定の際に地震リスクの観点においては本来、データセンター機能をもつ建物だけではなく、エリア、地盤も含めた総合的な観点で判断するべきです。しかしファシリティスタンダードでは地勢的観点は考慮せず、建物のみの観点における地震リスクでのTier評価としています。
建物構造には耐震構造、制震構造、免震構造があります。
法的基準としては建築基準法の中で「耐震基準」「新耐震基準」「2000年基準(阪神淡路大震災における検証を基に追加された基準)」と変遷してきています。
最近、街では後付けと推察される「X型“筋交いのようなもの”」の鉄鋼で補強された鉄筋コンクリートのビルを見かけることがありますが、これは1981年制定の新耐震基準に準拠するためかつ現実的な地震に伴う崩壊を避けるための対策です。
地震対策:Tier3相当
耐震性能Ⅱ類(大地震動後、構造体の大きな補修をすることなく、建築物を使用できることを目標とする)に該当し、一般的に制震構造などにあたります。
建物をあえてゆっくり揺らすことで地震の揺れを徐々に吸収し停止させる構造をもつ工法なので、建物の崩壊を防ぐという観点では有効ですが、データセンターとして利用する場合には、下記のリスクを考慮する必要があります。
- 地震そのものの揺れを低減できる構造ではないので、その地震動がサーバーに伝わります。
- 長周期地震動(周期の長いゆっくりとした大きな横揺れ)が発生した場合、「共振現象」が発生します。これにより、サーバーの損傷やビルの倒壊の恐れがあります。
直近30年以内に70%以上の確率で発生すると言われる南海トラフ地震、日本海溝起因の地震、相模トラフ起因の地震においては、震源から遠く離れたエリアにおいてもこの長周期地震動が発生すると気象庁も推定していますので、見逃してはいけない観点かもしれません。
地震対策:Tier4相当
耐震性能Ⅰ類(大地震動後、構造体の補修をすることなく建築物を使用できることを目標とする)に該当し、一般的に免震構造などにあたります。
地面と建物の間にゴムダンパー等を挿入し、加えて周囲の地面間にクリアランスを設け干渉崩壊を避ける工法のことで、現行の工法の中では地震リスクに対して最も有効な対策と言えるため、最近では個人住宅、マンションにも採用されるようになりました。
なお、データセンターの中には「免震」と称して、耐震構造の建物にも関わらずサーバールーム内にのみ後付けで免震装置を導入するセンターもありますが、この場合、地震によるシステムへの影響は低減できても建物そのものの崩壊、倒壊を防げるものではありません。
意識したい項目③:非常用電源設備・UPSの冗長性
多くのデータセンターにおいて、他の項目はTier4レベルを堅持していても、この項目においてはTier3以下に相当してしまう例を多くみます。
非常用電源装置(自家発電機)
- TIer3=n構成:数台並んでいてもバックアップ機はありません。したがって、多くの電量を発電しなければならないにも関わらず、数機の故障により発電量が不足する事態が起こりえます。
- Tier4=n+1構成:バックアップ機があることを意味し、1機の故障においては代替稼働することができるためリスク低減が可能です。
UPS(無停電電源装置)
- Tier3=n+1構成:バックアップ機をもつレベルとして、多くのデータセンターが用いている構成です。
- Tier4=n+2構成:2023年以前に竣工した日本のデータセンターの仕様を観ると、ここまでの充実度を達成しているデータセンターは数少ない状況のようです。
上記を観ても解る通り、この項目もデータセンター機能の継続性において非常に重要です。
UPSがTIer4レベルのデータセンターは、他の14項目全てがTier4相当の場合が多く、ファシリティスタンダードでは最高位の基準と判断できます。
ファシリティスタンダード以外の評価項目
上記の通り、ファシリティスタンダードは非常に参考になる基準だということは理解いただけたことでしょう。
一方で、自社の大切な「基幹システム」「サービス用システム」「バックアップシステム」などを格納するためのデータセンター選定において見逃してはならない観点は他にもあります。
実際に選定する各社の要望を聞くと、以下のような要件が共通して出てきます。
- コスト
- 自社からの移動時間
- Tierレベル
- 生体認証などのセキュリティ
- 内陸部エリアに立地
このようにファシリティスタンダードだけで判断できない基準もあり、それこそが見逃してはならない重要な要素となり得ます。
地震や津波が発生しても本当に安心できるデータセンターを選ぶ
予算やビジネスごとの必須事項などが増えてくるに従って、すべての基準でデータセンターを選定することは困難になりがちですが、やはり意識して考慮すべき観点は「そのデータセンターの災害時における本当の影響」です。
例えば、ファシリティスタンダードでは重要14項目において全てTier4であっても、そのデータセンターまでの道や橋の倒壊に伴い管路が破砕し電力線・通信線が断裂してしまえばスタンドアローンになってしまいます。残念ながら地震、津波の可能性の高い日本においてはその可能性をもつデータセンターがいくつも存在します。顕著な例として、湾岸エリアの埋め立て地に存在するデータセンターなどはその危険性を含んでいると言えるでしょう。
実際、2011年の東日本大震災の際、東京の湾岸エリアの一部においては液状化によりマンホールが2m以上浮上し繋がる管路は破砕、その影響により中の電力線・通信線は断裂するに至りました。
このことから、「地震の多発するエリアを避ける」「データセンターだけみると堅牢性が高い」といった個別の観点ではなく、「地震や津波が発生しても本当に安心できる(通信網の冗長性確保、周囲の液状化がない、架橋によって送電・通信がまかなわれていない等)」という観点を見逃さないことが重要と言えるでしょう。
紹介:USEN GATE 02 の提供するデータセンター
私たち USEN GATE 02 は全国70サイト以上のデータセンターをご用意しています。
その中でも本日ご紹介したTierに関して、高いTierレベルかつ私たちが独自に様々な観点から厳選したデータセンターをご案内することが可能です。
一例として、以下のようなデータセンターがございます。
- 御殿山データセンター(基準14項目中13項目がTier4、堅牢な地盤、海抜高の確保、都心)
- 天神橋筋六丁目データセンター(基準14項目中13項目がTier4、都心、環境に配慮したグリーンデータセンター)
- 彩都西データセンター(基準14項目全てがTier4、都心とは異なる地盤、海抜高の確保)