社内でナレッジ共有を推進するための具体的な方法4選 | ツール以外の手段や失敗の原因まで徹底解説
「特定の人しか知らない情報が多すぎるて困る」「属人化していて、誰かが休むと仕事が進まない」など、情報共有の不備により働きづらさを感じたことはありませんか? 適切に情報共有できていないと、業務の効率が下がるばかりか、会社全体の成長にブレーキをかける可能性があります。
ナレッジ共有はそうした問題を解決できる方法です。適切に情報共有することができれば、会社としてノウハウが溜まっていき、業務の効率や品質を向上することができます。
本記事では、ナレッジ共有の方法を紹介しています。ナレッジ共有をするにあたって知っておきたい、効果的な方法や失敗する原因についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
〈この記事を読んでわかる内容〉
- ナレッジ共有の重要性
- ナレッジ共有の効果的な手段
- ナレッジ共有が失敗する原因
ナレッジ共有とは
ナレッジ共有とは、組織やチーム内で得た知識や情報を他のメンバーと共有することを指します。業務をする中で個人が獲得したノウハウなどを他のメンバーに伝えることで、組織全体で業務の質とスピードを向上させるのが目的です。ナレッジは、以下の2種類に分類することができます。
- 暗黙知:言葉では表せないような、個人の経験や勘、コツのようなもの。感覚的な情報のため、自分以外へ共有するのは難しい。
- 形式知:文章や表などで可視化できる情報。体験が伴わなくても、知識として理解できるため、比較的共有しやすい。
例えば、ベテラン社員が持っている暗黙知を新しいメンバーに共有できれば、チーム全体の成長を促すことができます。
ナレッジ共有の重要性
ナレッジ共有は、会社がチームとして成長していくために、非常に重要な取り組みです。
例えば、一人の優秀な従業員に頼り切った経営をしていると、その人が休んだり、辞めてしまったりすると、同じ品質の仕事はできません。優秀な人材が競合他社に転職するケースなどは、会社がその人材の個人的なスキルアップのために、社内の様々なリソースを投入し、結果として転職市場での価値を高めることに利用されたということです。せっかく育てた人材が社外へ流出するのはとてももったいないことだと思いますが、一方で避けられないことでもあります。
そんなとき、優秀な従業員が日々の業務の中で獲得したあらゆる知識やテクニック、スキルなどを社内で共有できていれば、それは社内の共有財産として蓄積します。たとえ優秀な人材が自社を去ることになっても、会社全体としてはナレッジが溜まり、成長することができます。
終身雇用がもはや当たり前ではなくなった現代において、個人ではなくチームとして成長を続けられるかどうかが、ビジネスの成功の鍵を握っていると言えます。
共有すべきナレッジ
あらゆる情報が共有されるのに越したことはありませんが、特に共有するべきナレッジは、以下のものです。
- 社内ツールの操作手順や利用マニュアル
- 業務遂行のノウハウ(ベストプラクティス)
- 研修・トレーニング資料
これらの情報を共有しておくと、多くの従業員がスムーズに業務を行えるようになります。
例えば、社内ツールの操作手順や利用マニュアルを共有しておけば、ツールを導入した情報システム部門や総務部門が毎日たくさんの質問や問い合わせを受ける必要がなくなり、ユーザー自身で解決できるようになります。
営業やカスタマーサクセス部門を引っ張るリーダーたちのノウハウを共有できれば、メンバーのスキルに依らずパフォーマンスを底上げすることができます。
研修やトレーニングのための資料を共有しておけば、新入社員が加わった際、指導役の能力に左右されることなく、一定水準以上の教育を行うことができます。
働き方が多様化し、人材の流動化が高まっている昨今において、ナレッジ共有は業務効率化に大きく寄与します。
社内でナレッジを共有する4つの事例
社内でナレッジを共有するための具体的を4つご紹介しましょう。
社内wikiを活用する
社内wikiを活用して、情報を一元管理しましょう。いつでも必要な情報にアクセスできるため、業務の効率が向上します。例えば以下のような情報です。
- よくある質問
- 作業マニュアル
- 過去のプロジェクト事例
例えば、トップ営業マンの営業ノウハウをすべての営業メンバーに共有することができれば、会社全体の営業スキルを底上げすることができます。
社内の手続きに関するマニュアルを用意しておけば、同じような質問を何度も受ける必要がなくなります。
定期的な勉強会を実施する
定期的な勉強会を実施して、社員同士が知識を共有する機会を増やすのも重要です。マニュアルなどのドキュメントだけでは伝わりづらい情報もあるので、実際の交流は効果的です。
例えば、月に1度の勉強会で各部署の成功事例を共有すれば、他の従業員も新たな視点を得られます。ツールの使い方がわからないといった意見があれば、その場で解決するのも良いでしょう。
ナレッジ共有は効果があるとわかれば一気に浸透します。まずは効果を実感してもらうために、1回でも勉強会を実施してみるのがおすすめです。
メンター制度を導入する
共有のしやすさのため、暗黙知から形式知への変換することが有効ですが、すべてのナレッジを形式知にすることはできません。メンター制度を導入することで、暗黙知の共有を進めることも有効です。
おすすめは、経験豊富な社員が新人に対して日常的にサポートをする方法です。マニュアルには落とし込みづらい業務のコツや勘所を日々の業務に取り組みながら伝えることができます。
また、人に教えることで理解度が深まり言語化できるようになることもあるので、指導役の従業員が持つナレッジを形式知に変換する手助けにもなります。
社内SNSを使って情報交換を促す
社内SNSを使って、日常的な情報共有を活発化する方法もおすすめです。席が遠い別の部署の従業員とも気軽にコミュニケーションがとれたり、リモートワークをしていても情報交換することができます。
例えば、「こんな課題を持つお客様への商品を提案中」というような投稿をすると、似た提案を行ったことのある従業員からアドバイスをもらえるかもしれません。
使い慣れるまでは、投稿に対する心理的なハードルがあることもあるので、プロジェクトを推進するメンバーが積極的に活用を促すことが重要です。
ナレッジ共有が失敗する4つの原因
ナレッジ共有ツールを導入したからと言って、自然とナレッジが共有される環境が作られるわけではありません。ツールの導入有無にかかわらず、自社の従業員に対して適切な働きかけを行わなければ、積極的にナレッジが共有される文化は醸成されません。
具体的には、以下のようなことが原因で、ナレッジ共有文化の醸成に失敗するケースがあります。
- ナレッジを提供するためのモチベーションが考えられていない
- ナレッジ共有のメリットが社員に伝わっていない
- ナレッジ共有ツールが使いにくい
- 得られる情報の鮮度が悪い
ナレッジを提供するためのモチベーションが考えられていない
優秀な従業員の優れたノウハウがたくさんのメンバーに共有されることは、会社としてみれば素晴らしいことであるのは明らかです。
しかし、優秀な従業員がそのノウハウを提供することのメリットは考えられているでしょうか?
会社で働く人というのは当然、報酬のために自分の労働力を提供します。良い成果を出している優秀な従業員は、自力でその優れたノウハウを獲得し、そのおかげで良い成果を出せているわけです。なんの見返りもなしにその貴重なノウハウを提供するということは、まわりの生産性を上げることに繋がり、相対的に自分自身の評価を下げることになりかねません。その優秀な従業員の個人的な目線からすると、ナレッジを提供するメリットはないのです。
会社としては、その優秀な従業員から優れたノウハウを引き出すためのモチベーションを用意しなければいけません。例えば、情報提供すること自体を人事評価に含んだり、さらに直接的に評価するなら、価値ある情報提供にはインセンティブを支払うなどが考えられます。
従業員とは言っても一人の人間なので、会社のために自分自身を犠牲にするべきという古い考え方を押し付けるべきではありません。それこそ、その優秀な人材が他社へ流出することになれば、ノウハウよりも大きな損失になるはずです。正しく評価して、長く会社に貢献してもらうほうが良いでしょう。
ナレッジ共有のメリットが伝わっていない
ナレッジ共有を行うためには、ナレッジ共有のための工数が発生します。自分自身にとって本当に役立つ情報を得ることができるとわからなければ、わざわざ工数をかける意味を見出すことはできません。「会社のために、みんなが知っていることを共有しよう」というのは、会社にとって利益のあることですが、従業員一人ひとりの実務にとって利益があることを理解してもらう必要があります。
そのためには、まずは一部の人でもいいので、率先してナレッジを提供してもらうことを促すことが有効かもしれません。自分の手元の仕事に役立つ情報があることがわかれば、日々の業務を行う中で、ナレッジ共有ツールへアクセスしたいというモチベーションが生まれます。ユーザーが増えるほど、ナレッジ共有ツールとしての価値が高まるので、さらに多くのユーザーにとって魅力的になります。このようにして、ツールは広く浸透し、ナレッジを共有する文化が醸成されるのだと思います。
ナレッジ共有ツールが使いにくい
ナレッジ共有ツールが使いにくいことは、致命的な問題になりかねません。見た目や操作感も使いやすさに影響しますが、特に「検索性」が重要です。
せっかく有益な情報が溜まっていても、それを見つけ出すことが難しければ、ユーザーは使いたがりません。階層構造でうまく整理整頓することで、情報にアクセスしやすくするアプローチもありますが、その方法は、情報提供者側の負担を大きくします。前述したとおり、ナレッジ共有は、いかに価値ある情報を提供してもらうか、が最も重要です。その目線に立てば、提供者側の負担を大きくすることは非常にリスクが大きいと言えます。
そこで「検索」というアプローチが有効です。検索性が優れていると、情報を提供する側は、どこにどうやって情報を配置すればいいかを考える必要がありません。とにかくツールのどこかに置きさえすれば、求めるユーザーが見つけてくれるのです。
検索性が高ければ、ファイルストレージ型のナレッジ共有であっても、タイムライン型のナレッジ共有であっても、情報提供者の負担を抑えながら、情報へのアクセス性も高めることができます。
得られる情報の鮮度が悪い
古い情報が残っていると、誤った情報に基づいて判断してしまうリスクがあります。そのため、定期的に見直しを行い、常に最新の情報を維持するようにしましょう。これも先の問題点と同様に、情報を提供する側の協力が必要です。普段から情報提供が活発に行われていれば、古い情報も自然と新しい情報に更新されていくはずです。
ポータルサイトのような決まった情報提供者として管理者がいるタイプのナレッジ共有を行う場合は、マニュアルなどの配布資料に更新があった際は、必ず版を更新することを運用ルールに含めてください。
社内wikiのような、決まった情報提供者がいない場合にも、版の管理が必要な資料については、特別なルールを設けたほうがいいかもしれません。
ナレッジ共有は、組織全体の効率を高めるために非常に有効です。ただし、性善説的に情報提供を求めるのではなく、報酬などのメリットを提示しモチベーションを維持しなけば、ナレッジ共有の文化を根付かせることはできません。
ツールを導入して満足してしまうのではなく、運用がうまく回るように仕組み化できて初めて、その効果を実感できると思います。