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クラウド移行完全ガイド:AWS、Microsoft Azure、Google Cloud の特徴比較から選定のコツまで

著者:情シスマン
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オンプレミスサーバーの保守・管理維持の大変さ

オンプレミス環境の課題

オンプレミス環境でサーバーを運用し続けることは、まるで古くなった家を維持するようなものです。老朽化による故障のリスクは常に付きまとい、そのメンテナンスには多大なコストがかかります。

サーバーの運用コストは、電気代、保守費用、人件費など様々なものがあり、すべてを合わせるとかなりの金額になります。

さらに、サーバーのリソース不足も深刻な問題です。常にギリギリのリソースで運用していると、迅速な増強ができず、機会損失につながる可能性があります。一方で、余裕のあるリソースを確保し続けることは、オーバースペックなサーバーへコストを払い続けることになります。

2025年の崖問題との関連性

「2025年の崖」という言葉を聞いたことがありますか?

これは、経済産業省が提唱した、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進できなければ、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるという警鐘です。

その要因の一つとして、老朽化したオンプレミス環境の存在が挙げられています。古いシステムを使い続けることは、変化の激しい現代において、ビジネスの柔軟性を失い、競争力を低下させることに繋がります。

オンプレミス環境の課題を放置することは、ビジネスの未来を危うくするだけでなく、「2025年の崖」から転落するリスクを高めることにも繋がるのです。

DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~|経済産業省
www.meti.go.jp

クラウドへ移行することのメリット

クラウド移行は、この「2025年の崖」を乗り越えるための有効な手段の一つです。クラウドの柔軟性、拡張性、そして最新技術の活用によって、企業は変化に迅速に対応し、新たな価値を創造することができます。

コスト削減、柔軟性・拡張性、セキュリティ向上、BCP対策など

クラウド移行は、ビジネスの成長を加速させる様々なメリットをもたらします。

まず、コスト削減効果は非常に大きいです。サーバーの購入費用、電気代、保守費用、人件費など、オンプレミス環境で必要だった固定費を大幅に削減できます。クラウドサービスは、使った分だけ料金を支払う従量課金制が一般的であるため、無駄なコストを抑えることができます。

次に、柔軟性・拡張性の向上です。クラウド環境では、必要な時に必要なだけリソースを増減できるため、急なアクセス増にも柔軟に対応できます。また、新しいサービスや機能を迅速に導入できるため、ビジネスの変化に素早く対応できます。

さらに、セキュリティ向上も重要なメリットです。クラウドプロバイダーは、高度なセキュリティ対策を講じており、データセンターの物理的なセキュリティから、ネットワークセキュリティ、アプリケーションセキュリティまで、多層的な防御体制を構築しています。自社でセキュリティ対策を行うよりも安価に高いセキュリティ強度を保つことができます。

そして、BCP(事業継続計画)対策としても有効です。クラウド環境では、データが複数の場所にバックアップされているため、災害や障害が発生した場合でも、迅速に復旧できます。

クラウド移行時の注意点

クラウド移行は、企業の成長を加速させる強力な手段ですが、やみくもに進めてしまうと、期待した効果が得られないばかりか、新たな問題を引き起こす可能性もあります。クラウド移行を成功させるためには、以下の点に注意する必要があります。

コスト

1つ目のポイントは、コスト削減のための最適なリソース管理です。オンプレミスからクラウドへ移行する際は、まずは現在の使用状況を確認しましょう。多くの企業では、オンプレミスサーバーでは急なアクセス増加に対応できないため、余裕を持った設計をしていることが多いです。つまり、サーバーの未使用領域があり、オーバースペック気味にしているということです。クラウドサービスでは、柔軟にリソースを増減できるため、本当に利用する分だけを契約するようにします。

また、事前に設定したしきい値によって自動でリソースを増減させることができるオートスケーリング機能を活用すれば、担当者が設定を変更しなくても自動でリソースを管理できます。さらに、クラウドプロバイダーによっては、長期的な利用を事前に予約することで、大幅な値引きを受けることができます。 一般的に、リザーブドインスタンスと呼ばれますが、Microsoft Azure では、Reserved Virtual Machine Instances、Google Cloud では、確約利用割引(Committed Use Discounts|CUD)という名称も使われます。

セキュリティ

2つ目のポイントは十分なセキュリティ対策を行うことです。オンプレミスからクラウドへの移行は、ビジネスの俊敏性やコスト効率を高める一方で、新たなセキュリティリスクをもたらします。基本的なネットワークセキュリティや脆弱性対策だけでなく、データの暗号化やユーザー認証に関する対策も必要です。

様々なセキュリティ対策を行うために、クラウドアドバイザーツールを使うのも有効です。クラウドアドバイザーツールとは、クラウド環境の管理、最適化、セキュリティ強化を支援するソフトウェアツールです。手動では困難な作業を自動化し、効率的なクラウド運用を実現します。

クラウドプロバイダー自身が提供する AWS Trusted Advisor、Azure Advisor、Google Cloud Recommender の他にも、サードパーティ製のツールもあります。

セキュリティ対策は1度行えば終わりというわけではなく、定期的に見直しを行い、正しく運用されることが重要です。

運用体制

3つ目のポイントは、効率的な運用を実現するための自動化とルール整備です。セキュリティ対策と同様に、管理を属人化させず効率化するためにツールを使うことは非常に有効です。

具体的には、Infrastructure as Code(IaC)ツール(Terraform や AWS CloudFormation など)を利用して、インフラストラクチャーの構築・変更をコードで管理することができます。これにより、環境構築の再現性が向上し、手作業による設定ミスを防止できます。

構成管理ツール(Ansible、Chef、Puppet など)を利用して、サーバーやアプリケーションの設定を自動化することで、設定の一貫性を保ち、設定変更に伴うリスクを低減できます。

継続的インテグレーション/継続的デプロイメント(CI/CD)パイプラインを構築し、アプリケーションのビルド、テスト、デプロイを自動化すれば、開発速度を向上させ、デプロイメントに伴うダウンタイムを削減できます。

クラウド監視ツール(AWS CloudWatch、Azure Monitor、Google Cloud Monitoring など)を利用して、リソースの使用状況やパフォーマンスを監視し、異常を検知したら自動的にアラートを発行することもできます。これにより、問題の早期発見と迅速な対処が可能になります。

運用は、ツールを導入すれば終わりというわけではありません。どのように利用するか、ルールを設け、必要に応じてリソースや操作権限を制限します。

自動化ツールを使いこなし、適切な運用ルールを制定するためには、専門的な知見が必要です。専門スキルを持ったエンジニアを育成または採用することも求められます。

三大クラウドの特徴

クラウド移行を検討する上で、どのクラウドサービスを選ぶかは非常に重要な決断です。ここでは、代表的なクラウドサービスである AWS、Microsoft Azure、Google Cloud のそれぞれの特徴、適したケース、料金体系について解説します。

AWS(Amazon Web Services)

AWS は、Amazon が提供するクラウドサービスで、世界で最も利用されているクラウドプラットフォームです。

特徴:多様なサービス、成熟したエコシステム

AWS の最大の特徴は、非常に多様なサービスを提供していることです。コンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワーク、AI(人工知能)、ML(機械学習)、IoTなど、あらゆる分野のサービスが揃っており、企業のあらゆるニーズに対応できます。

また、成熟したエコシステムも AWS の魅力です。多くのパートナー企業が AWS 上でサービスを提供しており、AWS Marketplace ではサードパーティ製の様々なソフトウェアやツールを購入できます。

適したケース:大規模システム、グローバルビジネス

AWS は、大規模なシステムを構築・運用するのに適しています。豊富なサービスと高い信頼性により、エンタープライズ企業の基幹システムにも利用されています。

グローバルビジネスを展開する企業にも、AWS は最適な選択肢となります。世界中のリージョンにデータセンターを展開しており、グローバル規模でのサービス提供を支援します。

料金体系:従量課金、割引制度

AWS の料金体系は、従量課金制です。使用したサービス、リソース、時間に応じて料金が課金されます。

AWS Pricing Calculator を利用することで、事前に料金を見積もることができます。また、リザーブドインスタンスや Savings Plans(どちらも特定の期間の利用を事前にコミットすることで割引を受けられる仕組み)を利用することで、大幅な割引を受けることができます。

Microsoft Azure

Microsoft Azure は、Microsoft が提供するクラウドサービスで、Windows Server との親和性が高く、エンタープライズ企業に多く利用されています。

特徴:Windows Server との親和性、ハイブリッドクラウド

Microsoft Azure の最大の特徴は、Windows Server との親和性が高いことです。Windows Server、SQL Server、.NET Framework など、Microsoft 製品との連携がスムーズに行えます。

また、ハイブリッドクラウドに強みがあることも特徴です。オンプレミス環境と Azure を連携させることで、柔軟なシステム構成を実現できます。

適したケース:Windows Server 環境、エンタープライズシステム

Microsoft Azure は、Windows Server 環境をクラウドに移行したい企業に最適です。既存の Windows Server 環境を Azure に移行することで、スムーズな移行を実現できます。

また、エンタープライズシステムをクラウドに移行したい企業にもおすすめです。セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンスなどの機能が充実しており、エンタープライズ企業の厳しい要件を満たすことができます。

料金体系:従量課金、割引制度

Microsoft Azure の料金体系も他の2つのクラウドサービスと同様に、従量課金制です。使用したサービス、リソース、時間に応じて料金が課金されます。

Azure Pricing Calculator を利用することで、事前に料金を見積もることができます。また、Azure Hybrid Benefit やリザーブドインスタンスを利用することで、大幅な割引を受けることができます。

Azure Hybrid Benefit は、オンプレミス環境で使用している Windows Server と SQL Server のライセンスを Azure に持ち込むことで、Azure サービスを割引価格で利用できる特典です。

Google Cloud(旧称 Google Cloud Platform)

Google Cloud は、Google が提供するクラウドサービスで、データ分析・AI分野に強みを持っています。

特徴:データ分析・AI分野に強み、革新的な技術、オープンソースとの親和性

Google Cloud の最大の特徴は、データ分析・AI分野に強みを持っていることです。BigQuery、Cloud Dataflow、Cloud Machine Learning Engine など、データ分析やAI/MLに特化したサービスが充実しています。

また、革新的な技術を積極的に採用していることも Google Cloud の魅力です。Kubernetes や TensorFlow など、最新の技術をいち早く利用できます。

さらに、オープンソースとの親和性が高いことも特徴です。Kubernetes の開発元であり、オープンソース技術の普及に貢献しています。

適したケース:データ活用、AI・機械学習、ビッグデータ分析

Google Cloud は、データ活用に力を入れたい企業に最適です。BigQuery を利用することで、大量のデータを高速に分析し、ビジネスの意思決定に役立てることができます。

また、AI/MLを活用したい企業にもおすすめです。Cloud Machine Learning Engine を利用することで、高度なAIモデルを簡単に構築・運用できます。

ビッグデータ分析を行いたい企業にも、Google Cloud は最適な選択肢となります。Cloud Dataflow を利用することで、大量のデータを効率的に処理し、リアルタイム分析を実現できます。

料金体系:従量課金、割引制度

Google Cloud の料金体系も、従量課金制です。使用したサービス、リソース、時間に応じて料金が課金されます。

Google Cloud Pricing Calculator を利用することで、事前に料金を見積もることができます。AWS 、Azureと同様に、特定の期間の利用を事前にコミットすることで割引を受けられる仕組み(CUD)を利用することで、大幅な割引を受けることができます。

さらに、Google Cloud の主要サービスのひとつである Compute Engine では、継続利用割引という制度があり、請求月の25%以上のリソースを利用すると自動的に割引を受けられる仕組み(SUD)もあります。割引率は使用量に応じて徐々に高くなり、1ヵ月間連続稼働している仮想マシン(VM)インスタンスでは、リソース料金が実質最大30%割引されます。

実際の移行事例

ここからは、実際の移行事例を見ていきましょう。構成のアイデアや価格感を参考にしていただけると思います。

【AWS】最もオーソドックスな構成でファイルサーバーをクラウドへシフト

Windows Server を使った構成

Windows Server を構築し、それぞれファイルサーバー、 Active Directory①②として利用します。オンプレミスではなくIaaSで構築することで、物理サーバーの管理から解放され、 システム担当者の負荷軽減につながります。

構成図

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構成のポイントと参考価格

Windows Server を利用しているので、オンプレミスのサーバーと同じ使い方ができ、 WSUSなど他の用途にも使うことができます。

参考価格(月額)

約136,000円

ファイルサーバー容量

4TB(バックアップ取得)

構成

ファイルサーバー、Active Directory×2台、バックアップストレージ、VPNゲートウェイ

※価格は、2024年1月6日時点のものです。($1=150円で計算しています。)

【AWS】20TBのファイルサーバーを AWS マネージドサービスを使って構成

マネージド型のファイルサーバー Amazon FSx for Windows File Server

「Amazon FSx for Windows File Server」は、Windows Server 上に構築された完全マネージド型のファイルストレージで、容量とスループットにより価格が決まります。

マネージドサービスを使うことで、インフラ管理が不要になるのもメリットです。

構成図

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構成のポイントと参考価格

AWS で大容量のファイルサーバーを実現するには Amazon FSx for Windows File Server が適しています。Active Directory と連携することでアクセス権設定も引き継げます。

重複排除が可能で、2021年にはアクセス監査ログなどが取得できるようになるなど、機能追加が頻繁に行われており、今後もユーザビリティ向上が見込めます。

参考価格(月額)

約126,000円

ファイルサーバー容量

20TB(HDD)

構成

ファイルサーバー(シングルAZ)、VPNゲートウェイ

※価格は、2024年1月6日時点のものです。($1=150円で計算しています。)

【Azure】NetAppで運用していたファイルサーバーを Microsoft Azure で構成

NetAppからの切り替えでも遜色ない構成

オンプレミスのNetAppを使っていたお客様が容量の肥大化を課題に感じ、クラウド化を検討しました。

NetAppと同様のパフォーマンスを発揮できるか不安でしたが、Managed Disks(Premium SSD)を活用することで、快適にご利用いただけています。

構成図

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構成のポイントと参考価格

Windows Server を構築して、頻繁にアクセスするファイルは Managed Disks(Premium SSD)で運用します。アクセス頻度が少ないファイルは、 Azure File Sync のクラウド階層化を使用することで、安価に保存してコスト効率よくできます。 Azure Files は自動で容量拡張されるので、ディスクサイズの拡張作業などの管理工数が不要になります。

参考価格(月額)

約299,000円

ファイルサーバー容量

10TB

構成

ファイルサーバー(階層化設定)、Active Directory×2台、VPNゲートウェイ

※価格は、2024年1月6日時点のものです。($1=150円で計算しています。)

【Azure】オンプレミス環境のファイルサーバーのDR対策で Azure Files を活用

オンプレミスとの連携に強い Azure ソリューション「Azure Files」

Azure Files はSMB/NFSプロトコルをサポートしており、オンプレミス/クラウド環境問わず連携することができる優れたソリューションです。VPNを使わずにインターネット経由でも接続することが可能です。

構成図

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構成のポイントと参考価格

本ケースではDR対策として、Azure 側と常にデータの同期を行い、有事の際はファイルサーバーとして使う構成です。セュリティをさらに高めたい場合はVPN接続することも可能です。

※Azure Files のアクセス権設定などを実施する場合は、Active Directory との連携が必要です。

参考価格(月額)

約19,000円

稼働時間

730時間

ファイルサーバー容量

2TB

構成

オンプレミスサーバーにエージェントをインストールし、データを同期

※価格は、2024年1月6日時点のものです。($1=150円で計算しています。)

【Google】Active Directory はマネージドサービスを使ってOS管理から解放

Managed Service for Microsoft Active Directory

Google Cloud は、BigQuery や機械学習などが注目されがちですが、マネージド Microsoft AD サービスを展開するなど、社内システムにも寄り添っていく姿勢が感じられます。

構成図

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構成のポイントと参考価格

Windows Server でファイルサーバーを構築、Active Directory はマネージド Microsoft AD を採用することでインフラ管理から解放されます。

Google Cloud では、ユーザーが自由にマシンスペックを選択する事ができるカスタムVMを利用することができます。また、継続割引があり、利用時間に応じた割引が適用されます。

参考価格(月額)

約72,000円

稼働時間

730時間

ファイルサーバー容量

500GB

構成

ファイルサーバー、マネージド Microsoft AD

※価格は、2024年1月6日時点のものです。($1=150円で計算しています。)

まとめ

オンプレミス環境の老朽化、リソース不足、そして「2025年の崖」問題。これらの課題を解決し、ビジネスの成長を加速させるためには、クラウド移行は避けて通れない道です。

AWS、Azure、Google Cloud。それぞれに強みがあり、適したケースも異なります。自社のビジネス要件、技術的なスキル、そして将来の展望を考慮し、最適なクラウドサービスを選定しましょう。

クラウド移行は、単なるITインフラの刷新ではありません。ビジネスの未来を切り開くための戦略的な投資です。この記事が、皆様のクラウド移行を成功に導き、ビジネスの成長を加速させる一助となれば幸いです。

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AWS、Azure、Google Cloud の移行実践例
サーバー更改のタイミングで、クラウド化を検討される企業も多いと思います。特にファイルサーバーや Active Directory のクラウド移行において、自社に望ましいプラットフォーム選定やインフラ構成に悩まれるケースは多いのではないでしょうか。 本資料では、AWS、Azure、Google Cloud の各プラットフォームで実際に構築された6つの事例をご紹介しています。
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