社内ネットワークの構築・管理に関する基礎知識
職場でのデータの共有、遠隔地同士の安全な通信などを可能にしてくれる社内ネットワークは、業務の効率化を考えるうえでは欠かせないものです。社内ネットワークを導入すると職場にある複数台のパソコンや周辺機器、場合によっては地理的に離れた複数の拠点を1つのネットワークでつなぐことができます。このコラムでは社内ネットワークの導入を考えるうえで押さえておきたい基礎知識について解説します。
社内ネットワークを構築する前にやるべきこと
実用に耐える社内ネットワークを構築し、スムーズに運用するためには事前の準備が欠かせません。ネットワークの規格や接続台数、拠点数といったものを考慮に入れなければなりませんし、セキュリティ上の問題などを含む自社の現状調査も必要になります。
自社の現状にそぐわない社内ネットワークを構築してしまうと現場からの不満も出てきますし、後のトラブルの原因にもなりがちです。社内ネットワーク構築を成功させるためには自社の環境に合ったネットワークを作り上げることが重要なのです。
事前調査で現場のニーズやセキュリティ状況などを把握したら、調査結果に基づきネットワークの利用方針を定めます。そして利用方針に合わせてシンプルなシステム設計を行い、利用者にとって使いやすいネットワークを作っていきます。シンプルな設計にしておくことには、トラブル時の原因究明がやりやすくなるなど構築後の運用・管理にもメリットがあります。
また実際にネットワークを構築する前に、構築後の運用・管理体制を整えておくことも重要です。具体的な方法としては、運用・管理方法のマニュアル化、専用ツールの導入や外部業者への管理の委託といったものが考えられます。 詳しくは、◆◆「社内ネットワークを構築する!チェック項目と構築手順 」◆◆をご参照ください。
必須!社内ネットワークのセキュリティ対策
社内ネットワークでは業務連絡や機密事項など外部に漏れると危険なデータを扱います。それだけに社内ネットワークを構築、運用するうえでセキュリティ対策は必須です。
具体的に取るべき対策としては、まずファイアウォールやウイルスソフトなどのセキュリティ製品の導入、ネットワークセキュリティソリューションの導入などにより、社内ネットワーク自体のセキュリティ機能を強化させることが考えられます。Wi-Fiを社内ネットワークに活用している場合は通信の暗号化などWi-Fi特有のセキュリティ対策も必要です。
またセキュリティ事故の多くが社内の人間による人災であることから、社員1人ひとりのセキュリティ意識の向上も、重要なセキュリティ対策の1つになります。情報セキュリティに関する社員教育を定期的に行う、パソコンやインターネットの利用ルールを設ける、誓約書を書かせる、といったことがこれにあてはまります。 さらにアカウントやパスワードを適切に管理するユーザー管理、データへのアクセス権をコントロールするアクセス権管理、ネットワークの運用・管理担当者によるネットワークの監視、ログ収集なども欠かせない作業です。
適切な規定作りが社内ネットワークを脅威から守る
社内ネットワークを安全に運用するうえで規定作りは必須の作業といえます。いくらセキュリティの堅固なネットワークを作り上げたとしても、肝心の利用者が正しく使ってくれないのではセキュリティの意味がありません。情報漏えいやマルウェア感染などのセキュリティ事故その他のトラブルを未然に防止するためにも、PCやインターネットの利用に関する社内規定は必要です。
規定しておきたい一般的な内容としては、フリーソフトや有償ソフトの使用ルール、ハードウェア改造の禁止、インターネット閲覧の監視とその旨の告知、操作ログの収集・公開に関する告知などが挙げられます。社内規定のなかで社員1人ひとりの情報セキュリティに関する誓約書の提出を義務付けるのもよいでしょう。
社内規定作りで大切なのは厳格さと社員の自主性とのバランスです。インターネットの閲覧制限などはシステム上でも制限をかけることもできますが、あまりに制約を設けすぎてしまうとユーザーによって使いづらいシステムができあがってしまいます。ルール破りを防ぐためにも、社員にパソコンの管理者権限は残すなどある程度の柔軟性は持たせるなど無理なく守れるような規定を作ることが重要です。
詳しくは、 ◆◆「社内ネットワークに規定は必要不可欠!設けるべきルールは?」◆◆をご参照ください。
社内ネットワークに安心していますか?
実際社内ネットワークを使っている人で、安心して利用できているという人はどれくらいいるのでしょうか。全国の社会人100人を対象にアンケート調査を実施しました。
【質問】
社内ネットワークで不安を感じたことがある?
【回答結果】
感じたことがある:41
感じたことはない:52
トラブルに発展したことがある:7
調査地域:全国
調査対象:【年齢】20 - 29 30 - 39 40 - 49 50 - 59 60 【職業】パート・アルバイト 個人事業主 公務員 正社員 派遣社員 経営者
調査期間:2017年07月11日~2017年07月18日
有効回答数:100サンプル
安心して使っている人がいる一方で
回答者全体の約半数が不安なく社内ネットワークを利用できているという結果になりました。
- セキュリティがしっかりしているので、不安を感じたことはありません。(40代/女性/パート・アルバイト)
- 複数の人が同じデータを使用するためデータを失う可能性があるかもしれないと危惧していましたが、しっかりとしたバックアップシステムがあることを知ったからです。(40代/男性/正社員)
しかし不安を感じると答えた人も全体の4割に上っています。
- 社内のネットワークといっても、簡単に外部から侵入できそうだから(40代/女性/正社員)
- ランサムウェアに感染したことがあり、ネットワーク全体に感染した経験があるため。(40代/男性/正社員)
さらに実際にトラブルに発展したケースも少数ながらありました。
- パソコンそのものにはHDDがなく、ネットワーク上にあるサーバーにIDでログインする仕組みのためセキュリティは高いと思っていましたが、ウイルスに感染し業務が大変滞りました。また同じ問題が起きないか不安です。(30代/女性/正社員)
- 今では減りましたが運用上のトラブルは多かったです。(50代/男性/正社員)
利便性の高い社内ネットワークですが、セキュリティの問題などをめぐる社内の現状から不安を感じている人も多いようです。社内ネットワークを運用する上ではセキュリティ対策、ネットワークの安定化を含む万全の備えが必要であることがうかがえます。
社内ネットワークにWi-Fiを導入するということ
社内ネットワークの構築にはLANケーブルを使ってすべて有線で構築する方法のほか、一部ないしすべてをWi-Fi化するという構築方法もあります。
Wi-Fi(無線LAN)を使った社内ネットワークには有線にはないメリットがあります。配線工事が要らないのでコスト削減になる、タブレットやノートPCといったモバイル端末が使用可能になるなどです。
その一方で、有線にした場合に比べるとセキュリティ上の問題が発生しやすい、通信が不安定というデメリットもあります。そのためWi-Fiを職場に導入するにあたっては、ネットワーク構築時にデメリットへの対策をきちんと講じておく必要があるといえるでしょう。
実際にWi-Fiを導入するときはまず適切な親機を購入し、社内にアクセスポイントを設定するところから始めます。ビジネスユースであればセキュリティ機能などが強化された法人用の親機がおすすめです。 親機をLANケーブルでネットワークに接続したら、今度は各端末の設定を行います。親機と無線規格が合っているかどうかを確認し、Wi-Fiの使用を許可します。
このとき親機のログインIDやパスワードの変更といったセキュリティ関連の設定も忘れずに行いましょう。
詳しくは、◆◆「社内ネットワークのWi-Fi利用!接続のメリットとやり方は?」◆◆をご参照ください。
社内ネットワークを拡張するVPN
VPNには業者の専用回線を使うIP-VPNとインターネット網を利用するインターネットVPNの2種類があります。 これらのうち公共のインターネット網を利用するため、コスト面で優れているのがインターネットVPNです。 インターネットVPNは接続方式により、さらにLAN間接続VPNとリモートアクセスVPNの2つの利用形態に分かれます
VPNで仮想トンネルを構築するためにはVPN対応ルータのようなVPN装置が必要です。LAN間接続VPNでは離れた拠点にそれぞれVPN装置を設置し、VPN装置間にインターネット上の仮想トンネルを作って2つのネットワークを接続します。つまり拠点が2つあったとしたら、VPN装置は2つ必要です。
リモートアクセスVPNでは社内ネットワーク上にVPN装置を設置し、社内ネットワークの外から接続するコンピュータとの間で仮想トンネルを作ってデータ通信を行います。リモートアクセスVPNでは社内ネットワーク内のVPN装置は1つです。VPN装置との間で通信を行う外部のコンピュータに関しては、OSやwebブラウザの標準機能や、専用ソフトをインストールして設定を行います。在宅勤務の人、出先から社内ネットワークにアクセスしたい人にとって利便性の高いタイプのVPNです。
詳しくは、◆◆「VPNを使った社内ネットワーク!特徴やメリットは?」◆◆をご参照ください。
社内ネットワークは業務の効率化に役立つ
業務でPCやインターネットを使う機会が増え、社内ネットワークは職場における重要なインフラです。データの共有などによる業務の効率化を図れるほか、VPNを使えば複数の拠点を共通のネットワークでつなぐ、在宅勤務をするといったことも可能です。
セキュリティ対策や利用ルールを徹底すれば、安心で快適なネットワークが構築できます。社内ネットワークの導入で社員が働きやすい環境作りを進めましょう。