インターネット回線には「専有型」と「共有型」がある? ビジネスなら専有型を使いたい
ファイルサーバやグループウェアがクラウド化され、ワークフローもペーパレス化に向かい、あえてオフィスに行かなくても仕事が出来るようになった現在、インターネットなくして仕事は成り立ちません。更に言うなら、情報システム担当者が選ぶインターネット回線の品質によって仕事のパフォーマンスは大きく変わってくるでしょう。本記事ではインターネットの基本的構造や「専有型」と「共有型」の違いについて触れた後、専有型回線を導入する前に用意するものについても詳しく解説を行っていきます。
一般的なインターネットの構造について
インターネット回線の専有型と共有型の説明に入る前に、一般的なインターネット構造についてまずは押さえておきましょう。
自宅やオフィスからインターネットにつなげる場合、アクセス回線とインターネットサービスプロバイダ(以下プロバイダ)の契約が必要です。アクセス回線はインターネットまでの道のりという役割を持ち、プロバイダは回線を通ってきたユーザーに認証作業を行い、認可されたユーザーをインターネットに接続させる役割を持ちます。この回線網からプロバイダ網に入る際の認証作業をPPPoE認証と言います。
プロバイダ+回線のバンドル型
一般的な家庭のインターネット環境では、アクセス回線の契約とプロバイダ契約をそれぞれで行うのが主流です。例えば、回線はフレッツ光(NTT東西)を、プロバイダはOCN(NTTコミュニケーションズ)を契約するといった形です。
2015年以降は、「光コラボレーションモデル」(以下光コラボ)という新たなビジネスモデルをNTTが打ちだし、各プロバイダ事業者がフレッツ光を仕入れて自社のプロバイダとセット販売する事が可能になりました。このセット販売の形態を「バンドル型」と称します。これにより、各社が長期契約や他サービス(携帯や公共料金等)との更なるバンドル販売を行えるようになり、ユーザーへも価格面や問合せ先の一本化等、メリットとして還元できるようになりました。
一般家庭で契約するなら「光コラボ」を活用した方がメリットが高いでしょう。しかし、法人企業が契約する場合は、光コラボでインターネット契約を行うと、プロバイダのみの契約切替が出来ないという点などを注意しておく必要があります。
ちなみに「殆どの場合」と表現したのは、USEN ICT Solutionsの光コラボであればプロバイダフリーでも契約が可能だからです。(弊社の光コラボサービスUSEN 光アクセスについてはこちら)
回線サービスの例 |
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ISPサービスの例 |
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プロバイダと回線一体型
また、法人向けのインターネット接続サービスの中には、アクセス回線とプロバイダを一体型にしてひとつの業者が運営している場合もあります。こちらは、「光コラボ」の2つの企業のサービスをセット販売するものとは異なり、1社が自社のアクセス回線とプロバイダを一体化し、インターネット接続用回線サービスとして提供するものです。
一社提供であることによる価格面や問合せ先の一本化だけではなく、構造自体が一体化になっている為、回線網とプロバイダ網の2つの網を跨がず、同じ網内でインターネットに繋ぐことが可能になり、前述したPPPoE認証作業まで省く事が出来ます。少ないホップ数でインターネットに繋がるという事は、その分ネットワーク遅延を避ける事ができるという事です。
※ホップ数...データ通信において、送り先のサーバーにデータが到達するまでに経由した中継設備/機器の総数のこと。この数が大きいほど、通信品質が低下する。
共有型回線
「共有」の名の通り1本の回線を何本にも分岐させることで、近隣の複数企業(ユーザー)が共有で使用しているタイプの回線です。
共有で使用してるため安価に利用できるというメリットがありますが、アクセスが多くなり高負荷となると遅延や切断といった問題が起こります。帯域保証型のサービスではなく、ベストエフォートサービスの場合、提供帯域は分岐前の部分を表しているため、1Gbpsと謳っていても共有型の場合は最大32分岐となり、他の利用者の通信状況によって割り当てられる帯域が大きく損なわれるといったことがあります。
専有型回線
1本のインターネット回線を1社(1ユーザー)で独占して使用できる契約形態です。自社しかその回線を使うことがないため、他ユーザーの影響を受けずに安定的に高速な通信環境を確保できるというメリットがあります。ベストエフォートであったとしても、提供帯域全てを自社で利用できるので、共有型の回線に比べて安定して高速な通信が期待できます。
ビジネスで利用するなら「プロバイダ一体型×専有型回線」がおすすめです!
共有型のインターネット回線は複数の企業でひとつの回線を共用するため、利用料金が安くすみます。しかし、これまで説明してきた通り、インターネット接続サービスには種類があり、オフィスで利用するインターネット回線であれば共有型よりも専有型、プロバイダ+回線バンドル型よりもプロバイダと回線一体型のサービスを採用するのが望ましいのは明白です。
特に近年ではインターネット環境がないと事業を継続出来ない程、企業活動において必要不可欠であり、回線品質が低いことでインターネットが遅くなったり、ときどき切断されたりするような状況だと、従業員にストレスが溜まったり、ひいてはビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。分岐をせず、ダイレクトに繋ぐ専有型の回線であれば、他のユーザーの影響を受けない安定した通信が期待できます。通信速度の最高値を上げるというよりは、安定性が大きく変わるのがポイントです。
──── 専有型が向いている例 ────
- インターネット経由で提供する(SaaS)サービスの運営用回線として(ECサイト、有料アプリ、動画配信 等)
- 多くの従業員を抱える企業の本社、データセンタのインターネット接続回線として
- 複数の拠点を持つ企業のVPN受けの回線として
- クラウドサービスへの接続回線として
共有型回線を利用していて、通信の品質を上げたいと思ったときに、まずは帯域保証型にするよりも専有型にする方がコストの上がり幅が小さく、ミニマム投資で要件が叶う可能性があるのでお薦めです。専有型よりもさらに安定した通信が必要な場合は、帯域保証の回線を選択するとよいでしょう。
詳しい解説はこちらの記事より「インターネット回線の種類を知ろう!ベストエフォート・帯域保証・バーストとは?」
導入前に把握しておきたいこと
さて、プロバイダ一体型×専有型回線の品質については分かったものの、一般家庭で使われるサービスではない為、いざ導入しようとなった場合に想定外の事が起こる可能性があります。予め「こんなはずじゃなかった」を回避しておく為に、もう少しお付き合いください。
導入納期
共有回線で代表的なのはNTT東西のフレッツ光ですね。フレッツ光は(建物や地域にも因りますが)概ね契約から2,3週間程度で開通となります。そのイメージで専有型回線を発注してしまうと「この日からインターネットを使いたい」という期日に間に合わないという事態になりかねません。納品工程が異なる専有型回線はもう少し納期がかかりますので覚えておくと良いかもしれません。
開通希望日が決まっている場合は、その日から最低でも2か月前には発注するつもりで準備をしましょう。3か月前から発注先の業者に声をかけておくとより安心です。
入線可否
折角色んな会社のサービスを比較検討して決めたのに、やっぱり使えませんでしたとなるのは避けたいですね。その為に、回線敷設を予定している建物に希望の回線の入線が可能なのか?を予め聞きましょう。近年では建物の多くがキャリアフリー(どの通信事業者の回線も敷設OK)ですが、一昔前だと指定の通信事業者の回線以外敷設不可という建物もありました。いざ発注してしまえば、その回線提供業者が敷設予定の建物に対して入線承諾交渉を行うと思いますが、建物からNGと言われてから急いで他の通信事業者の回線を検討しなおすのも骨が折れます。
また、建物への入線承諾は得られたのでインターネット回線を発注し、いざ下見に来てもらったら、建物内の配管に空きがなかったのでインターネット回線の敷設工事をする前に配管を作る工事をしないといけなくなるというケースもあります。この場合は、開通にはこぎつけるものの、納期に大幅な遅れが出たり、想定していなかった出費を被るという事になります。建物の管理会社に入線可否を聞く時に、念の為配管に空きがあるかどうかも合わせて確認しておきましょう。
余談ですが、回線敷設を予定している建物がデータセンタであれば、空き配管がないという事は絶対にありません。その代わり構内配線(ハウスケーブル)費用がかかるデータセンタがしばしばありますので、こちらも事前確認をしておくと良いでしょう。
事業規模に関わらず企業であれば必ず専有型回線にするべき!という事ではありません。小さいオフィスであれば、共有型のインターネット回線でも充分に事足りますし、毎月の経費が安く済むのは企業にとって大きなメリットです。
しかし、多くの従業員を抱えていたり、オンライン会議が多い、複数のクラウドサービスを導入している、外向けのサーバを運用している等、ある程度の通信速度を安定的に確保しておきたい企業には、共有型回線では厳しい場面が増えてきます。
通信の質を安定させ、快適な業務環境を整えたいのであれば、是非一つレベルを上げて、プロバイダ一体型の一社占有回線サービスを検討してみてください。