【初心者向け】クラウドサージとは?対策方法と予防策、インフラ構築のポイントまで徹底解説
クラウドサービスが一般的になってきた昨今、企業として気を付けたいのが「クラウドサージ」です。
クラウドサージとは、クラウドサービスを利用中に、急激にトラフィックやリソースの需要が増加する現象です。計画的なイベントだけでなく、予期しないアクシデントによって突発的にアクセスが急増することがあります。
クラウドサージが発生すると、サービスのパフォーマンス低下が起こりやすくなります。企業としては、避けたいトラブルです。特に、一般ユーザーにWebサービスを提供する企業にとって、対策は必須だといえるでしょう。
そこで今回は、クラウドサージについて解説します。クラウドを導入するにあたって知っておきたいクラウドサージを防ぐ手順やクラウドサージが発生した際の対処法、クラウドサージに強いインフラの作り方も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
〈この記事を読んでわかる内容〉
- クラウドサージとは何か
- クラウドサージを防ぐ手順と発生時の対策
- クラウドサージに強いインフラにするためのポイント
クラウドサージとは何か
前述したとおり、クラウドサージとは、クラウドサービスを利用中に、急激にトラフィックやリソースの需要が増加する現象です。
クラウドサージが発生すると、用意していたリソースでは不足した状態となってしまい、サービスのパフォーマンス低下が起こりやすくなります。ユーザーにとってみれば、使いにくいWebサービスになってしまうのです。そのためWebサービスを提供する企業は、クラウドサージを理解し、適切に対策を講じる必要があります。
まずはクラウドサージについて、以下のポイントから理解を深めていきましょう。
- クラウドサージが発生する原因
- クラウドサージがもたらす影響
- クラウドサージの種類
- クラウドサージを避けるために知っておくべきポイント
クラウドサージが発生する原因
クラウドサージは、突然起こります。通常運転では問題がなかったクラウドシステムに、突如として大量のアクセスが集中した結果、システムがパンクしてしまうのです。つまり、システムのキャパシティを超えるアクセスが集まっている状態です。
多くの場合、新サービスのリリースやキャンペーンを実施した際に起こります。短期間に多くのユーザーがアクセスした場合です。一方で、システムの設計に問題があり、想定外の負荷がかかってしまう場合に起こるケースもあります。いずれにせよ、システムがアクセスに耐えきれず、パンクしてしまっている状態と覚えておきましょう。
クラウドサージがもたらす影響
クラウドサージは、企業にとって深刻な影響をもたらします。例えるなら、停電と同じです。クラウドを積極的に使っているほど、大きな影響を受けます。最悪の場合、企業のブランドイメージが低下するケースがあるほどです。
例えば、Eコマースサイトでクラウドサージが発生した場合、顧客が商品を購入できなくなって売上機会を損失するだけでなく、競合他社への顧客流出に繋がる可能性があります。
クラウドサージによってサービスが利用できなくなると、顧客からの問い合わせが殺到したり、取引が中断したりと大きなマイナスです。システム障害によってデータが失われるリスクも考えられます。
クラウドサージへの対応は、ビジネスの継続性を保つためにも非常に重要です。
クラウドサージの種類
クラウドサージは、発生パターンによって以下の3種類にわけられます。
- 短期的サージ:新サービスのリリースなど、一時的なイベントによって発生する
- 長期的サージ:システムの利用者が増加していくことで発生する
- 突発的サージ:サイバー攻撃など予期せぬ事態によって発生する
それぞれの特徴を理解していれば、効果的な対策を立てられます。特に短期的サージは、セールなどのあらかじめ分かっているキャンペーン期間に発生するので、予測しやすく対策は容易です。
一方で、突発的に起こるサージに関しては、予測ができません。起こったらすぐに対応する必要があります。
クラウドサービスは導入する際には、サージに対してどのような対策を講じることができるかを検討することが求められます。
クラウドサージを避けるために知っておくべきポイント
クラウドサージは、事前に対策を講じておくと影響を最小限に抑えられます。例えば、以下の方法があります。
- システムのスケーラビリティを強化する
- 可用性を高める
- フォールトトレランスを導入する(故障に対する耐性を高める)
- オートスケーリング機能を活用する
事前にクラウドサージが起こらないように計画を立てつつ、起こった場合には迅速に対応可能な状態にしていくことが必要です。
監視ツールを使って、トラフィックの変動をリアルタイムで把握していれば、迅速な対応も可能でしょう。
クラウドサージは起こるものだと想定し、どう対応していくかが重要なポイントです。
クラウドサージを防ぐための手順
クラウドサージを完璧に防ぐ方法はありません。しかし、以下の手順を踏めば、ある程度防ぐことは可能です。1つずつ見ていきましょう。
- システムのスケーラビリティを確保する
- キャッシュを活用して負荷を分散する
- ピーク時の負荷に備える
Step1.システムのスケーラビリティ(拡張性)を確保する
クラウドサージを防ぐために、まずシステムのスケーラビリティを確保しましょう。急激な負荷変動にも柔軟に対応できるようになります。
スケーラビリティをきちんと確保できていると、システムが負荷に応じて自動的に拡大縮小をします。例えば、アクセス数が急増した場合、自動的にサーバーを増設してシステムの処理能力を高められるのです。
サーバーがダウンするリスクを大幅に減らすためにも、スケーラビリティの確保は優先的に行いましょう。
Step2.キャッシュを活用して負荷を分散する
キャッシュの活用もサーバーへの負荷を軽減し、クラウドサージを防げる効果があります。頻繁にアクセスされるデータを一時的に保存し、サーバーへの負荷を分散できるためです。
同じデータに対して何度もリクエストが来る場合、キャッシュに保存されたデータを提供すれば、サーバーが毎回データを読み込む必要がなくなります。その結果、サーバーの処理能力が向上し、クラウドサージのリスクを低減できます。
キャッシュを最大限活用して、システムへの負荷を分散していきましょう。
Step3.ピーク時の負荷に備える
クラウドサージは、ピーク時に発生しやすいものです。そのため、ピーク時の負荷に備えていれば、クラウドサージのリスクを最小限に抑えられます。ピーク時の負荷を予測し、事前に対策を講じましょう。
その際に意識したいのが、システムのキャパシティです。アクセス数が最も多くなる時間帯であるピーク時の負荷を予測してシステムのキャパシティを調整すれば、クラウドサージが発生した場合でもサービスを安定稼働させられます。
セール期間など、アクセス数が大幅に増加することが予想される場合は、事前にサーバーを増設したり、帯域を拡大したりなど事前対策を実施していきましょう。
クラウドサージ発生時に取れる3つの対処法
クラウドサージは、対策を講じていても起こるものです。もし起こってしまった場合は、以下の方法で対処しましょう。
- 原因を特定して根本的な解決策を講じる
- 一時的な負荷軽減策を実行する
- 今後の対策を見直して再発防止に努める
原因を特定して根本的な解決策を講じる
クラウドサージが発生したときは、焦って対処する前にまずは冷静に原因を特定しましょう。根本的な原因を究明し、適切な対策を実施することでしか再発を防げないためです。
例えば、データベースの処理がボトルネックになっていることが原因でクラウドサージが発生している場合、データベースのスペックアップやクエリ最適化などの対策が必要になります。
原因が特定できていない状態で対策をしても、一時的な効果しか期待できません。より安定したシステムを構築するためにも、原因は必ず特定しましょう。
一時的な負荷軽減策を実行する
クラウドサージが発生している最中は、システムに過剰な負荷がかかっている状態です。そうした状況を改善するために、一時的な負荷軽減策を実行しましょう。システムの安定性を回復させ、サービスの提供を継続できます。
一時的な負荷軽減策としては、キャッシュの有効活用や、一部の機能を停止させるといった方法があります。システムへの負荷を軽減し、サービスの安定性を回復させてユーザー体験を維持しましょう。
今後の対策を見直して再発防止に努める
クラウドサージに対処した後は、今後の対策を見直すようにしましょう。再発を防ぎ、より強固なシステムを構築していくのも大切です。
原因を分析し、解消するための対策を講じておけば、同じような状況が再び発生するのを防げます。あわせてシステムのモニタリング体制を強化し、早期に異常を検知できる体制を整えると良いでしょう。
将来的に起こり得るクラウドサージを防止し、安定したサービス提供が可能になります。
クラウドサージに強いインフラを構築する5つのポイント
クラウドサージに強いインフラを構築するためには、いくつかの重要なポイントがあります。以下に紹介する5つの対策を講じれば、クラウドサージへの対応力を高め、安定したサービス提供が可能になるでしょう。
- セキュリティ対策を強化する
- パフォーマンスを最適化する
- 冗長化設計で可用性を高める
- 自動化ツールで運用効率を向上する
- 監視システムで異常を早期に検知する
セキュリティ対策を強化する
クラウドサージのリスクを低減するためには、まずセキュリティ対策の強化が不可欠です。不正アクセスやサイバー攻撃によるシステムダウンを防ぎ、クラウドサージのリスクを低減できます。
サイバー攻撃によってシステムが乗っ取られると、大量のトラフィックが生成され、意図せずクラウドサージが発生する可能性があります。
ファイアウォールや侵入検知システムの導入、定期的なセキュリティパッチの適用で不正アクセスやデータ漏えいを防ぎ、安定してクラウドサービスを利用できる状態にしましょう。
パフォーマンスを最適化する
インフラを構築する際は、システムのパフォーマンスを最適化するようにしましょう。クラウドサージが発生しにくい環境を作れます。システムの処理能力を高め、急激な負荷変動にも対応できるようになるためです。
システムのパフォーマンスが低い場合、わずかな負荷変動でもシステムが不安定になり、クラウドサージが発生しやすくなります。
システムはただ使うのではなく、定期的に最適化を行い、ユーザーの満足度を低下させないようにしましょう。
冗長化設計で可用性を高める
クラウドサージに強いインフラ構築の方法として、冗長化設計もオススメです。システムの可用性を高め、クラウドサージのリスクを軽減してくれます。システムの一部分が故障しても他の部分がその機能を代替するため、サービスの継続性を確保できるのです。
冗長化設計がされていない場合、サーバーが1つ故障するだけでシステム全体が停止してしまう可能性があります。
一方、冗長化設計ができていると、複数のサーバーでシステムを構成したり、重要なデータを複数の場所にバックアップしたりといった負荷分散が可能です。障害時でも迅速に対応し、サービスのダウンタイムを最小限に抑えられるでしょう。
自動化ツールで運用効率を向上する
自動化ツールの活用もオススメです。システムの運用効率を向上させ、人的ミスによるトラブルを防止できます。人がする作業は、どうしてもミスが発生してしまいます。人間なので仕方がありません。問題なのは、それが原因でクラウドサージが発生する可能性がある点です。
そういった際に、自動化ツールが役立ちます。デプロイメントやモニタリングの自動化などができれば、管理コストを削減しトラブルを予防できます。運用チームの負担も軽減できるでしょう。
導入するメリットが非常に大きい方法です。
監視システムで異常を早期に検知する
監視システムを導入してシステムの異常を早期に検知し、迅速な対応を取る方法もオススメです。クラウドサージによる影響を最小限に抑えられます。システムに異常が発生した場合、監視システムを使って早期に検知し、問題が拡大する前に対策を講じる形です。
サーバーの負荷状況やネットワークのトラフィックを監視し、異常があればアラートが鳴るように設定していれば、問題発生時にすぐに対策を講じられます。
システムの安定稼働を維持するためにも、導入を検討してみましょう。
クラウドサージは、企業が提供するサービスに大きな影響を与える可能性があります。対策が遅くなるほど深刻な問題になりかねないため、注意しましょう。
対策や予防には様々な方法があるので、実施しやすいものから取り入れていってください。もしクラウドサージが発生しても、慌てずに原因究明をし、対策を取っていきましょう。将来的な対策を見直してけば、再発防止にも繋がります。
自社が提供するサービスをユーザーに届けるためにも、クラウドサージの対策をして強いインフラを構築していきましょう。