スターリンク(Starlink)の法人価格は?ビジネスで利用するメリットや利用料金を紹介
近年、高速かつ低遅延の通信が可能な衛星インターネットサービス「スターリンク(Starlink)」が世界的に注目されており、日本国内でも徐々に提供が広がっています。
ビジネスにおける有用性も議論されていますが、従来の光ファイバーなどのインターネット回線よりも利用料が高いとも言われています。
そこで本記事では、ビジネスでスターリンクの導入を検討されている方に向けて、スターリンクの特徴やメリット、法人プラン料金について解説します。
※本記事は2024年8月時点での情報を参照しています。
スターリンクとは
スターリンク(Starlink)とは、アメリカの民間企業である SpaceX(スペースX)が開発した、衛星を利用した高速インターネットサービスです。従来の衛星通信に比べ、スターリンクは数千機の低軌道周回衛星によって提供されており、大幅に高速かつ低遅延のデータ通信を実現してます。
特に「光ファイバーが敷設できない」「携帯電話キャリアの電波が届かない」などといった、通信環境が整備されていない地域(山間部や海上、離島、発展途上国など)での高速なインターネット通信が期待されています。
スターリンクの仕組み
スターリンクは、高度550kmにある数千機の低軌道衛星を利用し、地上に設置したアンテナと送受信することで、インターネット通信ができる仕組みとなっています。スターリンクでは、2024年5月時点ですでに約6,000基近くの衛星が低軌道に展開されており、そのうち5,600基を超える衛星がコンステレーション(衛星ネットワーク)を形成しています。
参照:Starlink
日本国内でも2022年10月にサービス提供が開始されていますが、提供エリアは順次拡大しており、世界のあらゆる場所から高速インターネット通信が可能になることが構想されています。
スターリンクの個人向けと法人向けの違い
スターリンクには個人向けと法人向けがあり、用途ごとにそれぞれ3種のプランが用意されています。法人向けはすべてのプランに「プライオリティデータ(優先的な通信容量)」が割り当てられるという点で個人向けと異なります。
「プライオリティデータ」とは、特定のデータ容量まで優先的に帯域が割り当てられ、より快適な通信が可能になる仕組みです。
※モバイルのプランは「モバイルプライオリティデータ」という名称で区別されています。
スターリンク公式サイト上の法人向け(ビジネス)プランは以下の通りです。
プラン | 用途 | プライオリティデータ※ | ||
---|---|---|---|---|
固定利用 | 固定サイト用 | 40GB | 1TB | 2TB |
陸上モバイル | 陸上移動用 | 50GB | 1TB | 5TB |
マリタイム | 海上移動用 | 50GB | 1TB | 5TB |
※「陸上モバイル」「マリタイム」は「モバイルプライオリティデータ」を記載
容量をオーバーした場合も使えなくなるわけではないですが、個人向けと同等クオリティの無制限通信(スタンダードデータ)に切り替わるほか、利用場所は陸地に限定されます。そのため「固定利用」や「陸上モバイル」であれば問題ないですが、「マリタイム」には注意が必要です。
ビジネスでスターリンクを利用するメリット
スターリンクは、以下のようにさまざまなメリットがあります。
- 通信環境が整っていない場所でもインターネットを利用できる
- 災害の影響を受けにくい
- オフィス外でも利用できる
- 天候に左右されない
ここでは、法人がスターリンクを導入する代表的なメリットについて詳しく説明していきますので、ビジネスで活用したいと思っている方は参考にしてください。
通信環境が整っていない場所でもインターネットを利用できる
従来では、通信環境が整備されていない山間部や海上、離島など、地域によってはインターネット利用が制限されていました。
しかし、スターリンクは大量の人工衛星を利用して通信するため、固定回線や携帯キャリアの電波が届かなかった地域でのインターネット利用も可能にします。光ファイバーを敷設できないような地域に工場や営業所がある法人にとってはようやく対応策が出てきたと言えますし、IoTなどのDX推進が期待できます。
災害の影響を受けにくい
一般的に、光ファイバーなどの固定回線は災害で電線や地盤が崩壊してしまうと復旧に時間がかかってしまいます。
一方で、スターリンクはアンテナと電力さえ確保できればあらゆる場所でインターネット通信を享受できるため、災害時の有用性が高いと言えます。実際に、2024年の能登半島地震ではKDDIとソフトバンクにより約700台のアンテナが無償提供され、通信インフラに大きな被害を受けた地域でもインターネット利用が可能となりました。
ビジネスにおける利用という意味では、固定回線のバックアップとして用意しておくとBCP対策となり、真価を発揮してくれるでしょう。
オフィス外でも利用できる
オフィス外でインターネット通信が必要になるときもあるかと思います。営業の外回りや出張であればスマートフォンやモバイルWi-Fiで事足りますが、そうもいかない場合もあります。たとえば、以下のようなケースです。
- 1~2ヵ月程度の社外施設でのイベント運営
- 2~3ヶ月程度のプレハブを設けるような工事
- 1~2週間程度のオフサイト会議・アウトドア研修
こういったことが多い法人にとっては、陸上モバイルプランのスターリンクを契約しておけば、いつでも目的の場所でインターネット利用ができるため便利です。
それなりのサイズのアンテナ(小さめのテーブルくらい)を持ち運ぶ必要はありますが、モバイルWi-Fiに比べると複数人利用にもしっかりと耐え得る品質のため、メリットは大きいでしょう。
天候に左右されない
悪天候に強い点もスターリンクのメリットです。
スターリンクは雪や雹、みぞれ、大雨、極度の暑さなど、様々な気温や気象条件に対応できるよう設計・テストされています。一般的な衛星通信同様、雨天時は降雨減衰の影響を受けて通信品質が落ちますが、それでも全くインターネットが利用できないという事態は起きにくくなっているようです。
こちらも法人にとってはBCP対策の観点で有用と言えます。
スターリンクの法人向けプラン料金は?
スターリンクの導入を検討している法人にとって、気になるのはやはり費用面ではないでしょうか。日本国内では、スターリンクの利用料金はほかのインターネットサービスよりも高い傾向にあるため、よく確認しておく必要があります。
スターリンク(公式)
まずはスターリンク公式サイトの案内を見てみましょう。
プラン | プライオリティデータ※ | 月額費用 | 推奨ハードウェア費用 |
---|---|---|---|
固定利用 | 40GB | 9,600円 | スタンダード:55,000円 |
1TB | 28,000円 | ||
2TB | 56,000円 | ||
陸上モバイル | 50GB | 33,408円 | 平面高性能:365,000円 |
1TB | 133,632円 | ||
5TB | 668,160円 | ||
マリタイム | 50GB | 33,408円 | 平面高性能:365,000円 |
1TB | 133,632円 | ||
5TB | 668,160円 |
※「陸上モバイル」「マリタイム」は「モバイルプライオリティデータ」を記載
なお、この中には設置工事は含まれていないため、自身で設置するか専門業者に依頼します。業者に依頼する場合は別途費用がかかりますが、特に固定利用プランはアンテナの設置場所によっては穴あけや電気工事が必要となります。
設置時のトラブルを避けたければ、業者に依頼しましょう。
正規代理店
スターリンクは各地域に正規代理店を設けており、そこから購入することもできます。正規代理店における法人向けスターリンクは「Starlink Business」という名称で展開されており、現在(2024年時点)日本には以下5社の正規代理店が存在します。
- KDDI
- ソフトバンク
- スカパーJSAT
- JSAT MOBILE Communications
- NTTドコモ(NTTコミュニケーションズ)
いずれも価格には大きな差はないようです。「固定利用」プランで比べてみましょう。
KDDI | ソフトバンク | スカパーJSAT | |
---|---|---|---|
独自プラン名 ※1 | ビジネス固定プラン | スタンダードプラン(陸上向け) | 陸上固定 |
40GB | 9,800円 | 9,800円 | 17,000円 |
1TB | 32,000円 | 32,000円 | 32,000円 |
2TB | 63,000円 | 63,000円 | 63,000円 |
6TB | 189,000円 | 189,000円 | 189,000円 |
サポート ※2 | 33,000円(税込) | 33,000円(税込) | 33,000円(税込) |
※1 すべて「固定利用」プランに相当
※2 スターリンクは免税のため、サポート費用のみ課税対象
コストコオンラインやヤマダウェブコム、au Online Shop でも購入できるようですが、あくまで機器販売のみようです。
スターリンクを利用する際の注意点と導入がおすすめの法人
スターリンクは様々なメリットがありますが、以下の点には注意が必要です。
- 設置場所に障害物があると通信が劣化する
- 設置場所が高所に限定されやすい
- ほかのインターネットサービスと比較して高い
ここでは、法人がスターリンクを導入する際に気をつけたいポイントを解説します。
設置する場所に障害物があると通信が劣化する
スターリンクを導入する場合、設置場所には注意が必要です。
スターリンクは人工衛星との通信に専用のアンテナを使用します。このアンテナが向く方向に障害物がある場合、通信が劣化してしまいます。ある程度ひらけた場所での利用であれば問題ないですが、都市部のビルが密集している地域や木々の多い山間部などではしっかりとした検証が必要でしょう。
設置場所が高所に限定されやすい
スターリンクの通信を最適化するためには、上方がひらけた場所にアンテナを設置する必要があります。そうなると、自ずと設置場所は高所に限られてきますが、これには2点の問題があります。
設置に危険が伴う
たとえば一般的な住宅の屋根に設置することを想像してみると、いかに危険であるかが分かるかと思います。人が出入りできるような屋上が用意されている自社ビルに設置するということであれば問題ありませんが、そうでない限りは専門業者に依頼することをおすすめします。
そもそも設置できない
光回線でも似たような問題が起きがちですが、入居している物件の管理会社がスターリンクの設置を許可しないケースもあり得ます。一般的なオフィスビルで“高所”となると屋上以外はあまり考えられませんが、屋上の一区画を占用したり配線を行ったりするというのは、ややハードルが高いかもしれません。
スターリンクを導入する場合は、必ず事前に物件の管理会社に相談するようにしましょう。
ほかのインターネットサービスと比較して高い
スターリンクの利用料金は、日本国内のほかのインターネットサービスと比較すると、初期費用・月額費用いずれもやや高い傾向にあります。
ビジネスで利用するとなると40GBのプランでは少し心もとないですが、ひとつ上の1TBのプランを契約した場合は月額32,000円かかります。法人向けの固定回線が安価なもので月額20,000〜30,000円で利用でき、データ容量の制限もないことを考えると、やや高いように感じます。
しかし、前述の通りスターリンクは固定回線が敷設できないような場所でこそ真価を発揮します。そういった場所に法人向け固定回線を引こうとしたら、月額10万円以上で納期も4〜6ヶ月かかってしまった、なんてケースもあります。そういった観点では、スターリンクも比較的安価であると言えるかもしれません。
また、地方の高価な電力系回線をバックアップとしてネットワーク冗長をしている法人にとっても、代替案となるレベルの費用感でしょう。
スターリンクがおすすめの法人
これまでご紹介したスターリンクのメリットや注意点を踏まえて、導入するのにおすすめな法人は以下の通りです。
- 山間部や離島などで事業を行う、または社屋を持つ法人
- インターネット環境がない場所に一定期間滞在することがよくある法人
- BCP対策としてバックアップ回線を用意したい法人
スターリンクは従来の衛星通信サービスに比べて大幅に高速なデータ通信が可能となっており、これまで通信が制限されていたエリアでも利用できます。それに大きなメリットを感じる法人は利用してみると良いでしょう。
導入したくてもできなかったIoTツールやクラウドサービス、あるいは実施したくてもできなかったDX施策の後押しになることも期待できますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。